東京駅を設計した辰野金吾の駅舎は、1889年に完成したオランダのアムステルダム中央駅を参考にしたと言われる。しかし辰野がオランダを訪れた記録はなく、アムステルダム中央駅を参考にしたと本人が述べた記録もない。さらに建築的に言えば、アムステルダム中央駅は垂直線を強調したゴシック建築を基本としながらルネサンス風を加味した設計であるのに対して、東京駅は帯石により水平線を強調したルネサンス建築という違いがあり、明らかに異なっている。
当時のように鉄筋コンクリートの技術が発達していなかった時代には大規模な建物は煉瓦積みか石積みで造るほかなく、どちらの駅も通過式の配線を前提にその線路の脇に駅舎を配置することから、構成は類似せざるを得ないとの解釈がある。またオランダのゴシック・リヴァイヴァル建築は、辰野と関わりのある歴史主義建築に通底していることもあり、両者が似た印象を持つことはある意味必然であると指摘されている。