奈良公園の「鹿寄せ」は明治25年、1892年から始まった伝統行事。当初はラッパによるもので、1949年からナチュラルホルンによって行われるようになった。ホルンを吹くのは、イベントを主催する一般財団法人「奈良の鹿愛護会」職員の藤本康之さん。同愛護会では病気や交通事故にあった鹿を保護したり、鹿の調査などを行っている。9時になり、藤本さんがさっそく金色に輝くホルンを吹きはじめる。最初は後ろ側から静かにトコトコと小さな鹿の集団が音色に導かれるように、藤本さんのもとに集まってきた。
そして来場者が喜んだ次の瞬間、「春日大社本殿」の方から鹿の大群がダッシュ! その光景に観光客からは「わあ!すごいすごい!」と、感動に近い大きな歓声が上がった。一定の鹿が集まると竹かごから色々な種類のドングリをまく。こりこりと音を立ててドングリをほおばる鹿のなかには、今年生まれたばかりの小鹿も混じっており、とても微笑ましい。