弘前市長記者会見
弘前城地切式
いよいよ本格的に始まった弘前城石垣修理工事。2015年8月16日に「地切式(じぎりしき)」が行われました。地切って、初耳だったので調べてみると、建築関係のクレーン用語のようです。つり荷を地面から離すらしい。8月下旬から始まる曳屋のために、弘前城天守が地面から切り離されたのです。
弘前城天守閣地切式の会場には、工事関係者と一般の方々の奥に葛西憲之弘前市長と弘前市のゆるキャラであるたか丸くんと児童がスタンバイしていました。葛西市長の「地切りの作業にかかれ~!!」と言う号令の下、児童たちの号令もそれに続いて弘前ねぷたまつりで流れるお囃子をBGMに弘前城天守閣がジャッキアップされて持ち上がりました。
一次曳屋
弘前城石垣大改修に伴う曳屋工事は、2015年9月3日に天守を水平方向に初めて動かす「一次曳屋」を行い、本丸内側、北西方向に5.85メートル移動し、初日の工程を終えた。天守の移動は前回の石垣改修が終了した1915(大正4)年以来100年ぶり。一次曳屋は4日まで実施し、初日と合わせて計約22.3メートル天守を動かす。
石垣修理に伴い、国の重要文化財の天守を解体せずに動かす約100年ぶりの「曳屋」工事が行われている弘前城(青森県弘前市)で3日、重さ約400㌧の天守の移動が始まった。10月下旬までに、70㍍離れた仮設の天守台へ到着する予定。
弘前城天守回転
城の天守を70メートル離れた場所に移す「曳屋」と呼ばれる工事が進む青森県弘前市の弘前城で2015年9月13日、天守を水平に25度回して方向転換させる作業があった。高さ14・4メートル、総重量400トンの天守がゆっくり回り始めると、観光客から「動いた!」と歓声が上がった。
これは曳家作業で移動途中の木を避けるための措置。小雨が降る中、地上2メートルの高さにジャッキアップされた天守が2時間ほどかけて向きを変えた。
弘前城の石垣修理に伴う天守移動で、2015年8月16日に地切式から工事が始まった。10月下旬までに約70メートル離れた仮設の天守台に移動させる。石垣修理後、同様の工法で2021年度に元の天守台に戻す。
曳屋ウィーク
国の重要文化財の天守を解体せずに、別の場所に移動させる「曳屋」工事が行われている弘前城で2015年9月20日、レールに載った天守を綱引きの要領で引っ張る曳屋体験が行われた。
シルバーウィークの連休中だったこともあり、園内は連日多くの来園者で賑わっていた。曳屋ウィークの6日目にあたる9月25日は、5回の曳屋体験を行い75㎝の移動が行われた。1回の曳屋体験イベントにつき、15㎝の移動を行っている。2015年9月25日時点で弘前城の移動距離は37.95m。残りはあと40.96mとなった。イベント期間中は累計で4.05mの移動を予定している。
二次曳屋
三次曳屋
土台から切り離されてから、およそ2カ月。弘前城天守がおよそ80メートル離れた目的地に到着しました。曳屋工事は2015年10月17日が最後の移動で、残る距離は4.3メートルです。午前8時40分、天守は動き始めます。最後の移動を見届けようときょうも大勢の人が詰めかけました。きょうの移動開始からおよそ1時間40分後の午前10時20分ごろ、その時を迎えます。天守は今後、ジャッキダウンされ、10月24日に仮の天守台に納まります。
弘前城本丸石垣修理事業に伴う天守曳屋工事は17日、最後の水平移動となる三次曳屋が完了しました。多くの市民らが固唾をのんで見守る中、天守は仮天守台に向け4.3メートル移動。この2日間で計17.45メートル動き、仮天守台に乗り上げました。
仮天守台
着座式
弘前城石垣大改修に伴う天守の曳屋(ひきや)工事は24日、一時的な移設先となる仮天守台へ天守を設置する最後の作業が行われた。市民や観光客が見守る中、ジャッキダウンした天守が仮天守台に着座。1915(大正4)年以来、100年ぶりとなる曳屋工事は実質的に終了した。
弘前市は、来年3月にかけ天守の耐震補強を実施、4月からは、移設先で天守を一般公開する。また、来年度からは、崩落の危険性が指摘されている石垣を解体し、修復する作業に着手。天守が元の位置に戻るのは早くて6年後、事業全体が終了するのは10年後の予定だ。
曳屋工事は8月16日の「地(じ)切(ぎり)式」で本格的に開始。水平移動は9月3日から10月17日まで行われ、元の天守台から、北西方向の仮天守台へ、天守が77.62メートル動いた。21日からは天守を計75センチ下げるジャッキダウンが始まり、23日時点で70センチ天守を下げていた。24日、残された5センチのジャッキダウンは「着座式」と称したセレモニーとして行った。
工事全体を統括する西村組(弘前市)と、曳屋を担当する我妻組(山形県米沢市)の作業員が配置につき、葛西憲之弘前市長の「天守台に据えや-っ」の号令の下、高さ約14.4メートル、重さ約400トンの天守は油圧ジャッキで「ガタ、ガタ…」と音を立てて下降。「到達した」とのアナウンスが流れると、会場からは拍手が起こり、関係者、観衆が一体となって風船を空に飛ばす「バルーンリリース」で完了を祝った。
曳屋開始以降、定期的に現場に通っていた、弘前市の三浦和子さん(63)は「城もそうだが、職人さんたちの姿に感動した。本当にご苦労さまと言いたい」と声を詰まらせた。葛西憲之市長は「天下の大事業として、関心を集め続けてきた曳屋工事が一定程度の成果を歩んできたのも、職人さんたち、工事に携わった皆さんのおかげ」とねぎらった。
職人万感の涙
国内外の注目を集めた青森県の弘前城天守の曳屋工事が24日、実質終了した。世紀の大工事を支えたのは「西村組」(弘前市)と「我妻組」(山形県米沢市)の職人たち。現場責任者の對馬悟さん(61)=西村組常務=と、曳屋を主導した石川憲太郎さん(40)=我妻組取締役工事部長=は「皆さんの応援や思いを感じた。工事をやって本当に良かった」と強調。6年後とされる天守の曳き戻し作業へ「また同じメンバーでできたら」と思いをめぐらせた。24日の「着座式」終了後も、感慨深げに現場に立ち尽くしていた石川さん。歩み寄ってきた對馬さんから握手を求められると、こらえていたものが頬を伝った。労をねぎらう對馬さんの目も潤んでいた。
工程は決して平たんではなかった。工事発注者の弘前市の方針で、作業は基本的に全て公開。曳屋体験「曳屋ウィーク」などのイベントも組み込まれ、日程は常にタイトだった。それでも職人たちは弱音を吐かず、天守のジャッキダウンといった難作業をこなし、市民・観光客らへの説明や写真撮影にも笑顔で応じた。文化財の保存、修理関係の工事は、一般的に他の工事と比べ利益率が低いとされる中「みんなの大事な宝をしっかりとした形で将来に残したい」と言い続けてきた對馬さん。曳屋完了後の取材には「文化財の工事は過程が大事。もっと公開して、みんなで宝を守ろう-という気持ちになれば、われわれの励みにもなるし、みんなも豊かになる」と語った。
その對馬さんに「同じにおいがする」と言わしめたのが、専門業者の幹部として、全国の寺院や学校などの曳家(屋)を手掛けてきた石川さんだ。「弘前城を何が何でも着座させる」との思いを胸に、同僚らと7月から単身赴任生活を続けてきた。工事中は、家族にほとんど会えず。天守の回転作業が行われた9月、祖母が亡くなった際も姿は現場にあった。
曳屋完了後の取材には「所長(對馬常務)はじめ、皆さん温かく、この環境でしか工事ができなかった」と声を詰まらせた。来年3月まで天守の耐震補強工事を行う西村組を残し、役目を終えた我妻組の職人は11月上旬にも弘前を離れるが、石川さんは家族と共に来春、満開の桜に包まれた、曳屋後の天守を見に、再び弘前を訪れるつもりだ。
2016.3.9の皆既日食概要
インドネシア皆既日食の概要 (UTC+7)
■観測場所の天候
この皆既帯は、2016年3月9日に西大平洋を通過します。最初は熱帯収束帯が居座るインドネシアの島々を通過するので、この地域では雲間からの観測となるでしょう。
Jay Anderson氏より抜粋した資料によると、赤道をまたいで熱帯収束帯が居座るインドネシアの島々では雲量が多くてあまり観測に向かないことが分かります。晴天率を求めるなら、ミクロネシア連邦の島々が最適です。
皆既帯付近で一番晴れやすい地域は米領ウェーク島ですが、99%の部分日食となってしまいます。一番無難なのは、グアム島から船舶をチャーターしてマリアナ海溝付近の皆既帯に行くしかありません。ミクロネシア連邦に属するヤップ州の島々には僅かながら皆既帯が掛かる環礁があります。ここでは、皆既帯が通過する島と環礁について天候の概略と共に説明します。
ムンタワイ諸島
ムンタワイ諸島は、インドネシア、スマトラ島の西にある諸島。スマトラ島とはムンタワイ海峡で隔てられています。ムンタワイ諸島の行政区は西スマトラ州に属します。主な島はシブルット島、シプラ島、南北パガイ島。
2010年10月25日現地時間 21時42分22秒にインドネシアのスマトラ島沖で発生した地震では死者約 500名。ムンタワイ諸島などが被害を受けました。2010年には4月と5月にもスマトラ島付近で大きな地震が発生しています。被害が大きかったのは西スマトラ州北パガイ島、南パガイ島。津波地震であったとされ、津波の最大の高さは8m、海岸から500mまで押し寄せました。住民によると、大きな揺れを感じた2007年のスマトラ島沖地震では津波が観測されなかったため、今回も大丈夫だと思ったそうです。翌26日にはジャワ島のムラピ山が噴火し、多数の死傷者が出ました。
■ムンタワイ諸島のDATA
インド洋の東経90度海嶺付近から最初に月の影が地球に接します。地球上で最初に皆既中心線が通る陸地で見られる場所が、北パガイ島です。北パガイ島で最初に通過する皆既帯が通る場所に Macaronis resort があります。ここは日本人が殆ど訪れたことのない場所で、この島には白い砂浜と透明な海があり、サーファーの憧れの地として有名です。島の岬にはコテージが立ち並びます。
その島を空から無人航空機のマルチコプターを使って撮影した映像が美しいです。地震と津波の被害が大きかった北パガイ島は2014年現在、あまり被害の痕跡がなかったかのように穏やかです。但し3月の平均雲量は65%と高く、皆既中の太陽高度も12度しかないことからリゾートホテルへ行ったついでに観測する方が良いかも知れません。
以下、北パガイ島 Macaronis resort のDATAです。WIBは、インドネシア西部時間のことです。
Macaronis resort
2° 46´ 52.5" N △T=68.2s
99° 58´ 43.4" E
Magnitude at mid eclipse : 1.01523%
Moon/Sun size ratio : 1.03077
total solar eclipse : 1m 53.3s
Event Date Time (WIB) Alt Partial
(C1) : 2016/03/09 06:20:22.0 -02.3° 0.00%
Sunrise 2016/03/09 06:29:00.0 -00.3° 6.89%
(C2) : 2016/03/09 07:18:16.0 +12.1° 100.00%
(MAX) : 2016/03/09 07:19:12.4 +12.5° 101.52%
(C3) : 2016/03/09 07:20:09.2 +12.5° 100.00%
(C4) : 2015/03/09 08:25:43.2 +28.9° 0.00%
パレンバン
■スマトラ島の地理
スマトラ島は、インドネシア共和国の大スンダ列島に属します。島の面積は473,600km²あり、世界でも第6位の面積がある島です。西海岸沿いに火山活動を伴うバリサン山脈が走り、最高点はクリンチ山 (3,805m)。メダン南のトバ湖はここ200万年で地球最大の噴火が起こった跡のカルデラ湖。避暑地、観光地として有名で、湖に浮かぶサモシール島はバタク人の伝統家屋や舞踊などが楽しめます。中部高原はスマトラ島の人口が集中しますが、東海岸の大部分は湿原が展開して人口は希薄です。北部アチェ州は古くから交易が盛んで、インドネシアで最も早くイスラム教を受け入れました。ほぼ中央部を赤道が走り、高温多雨。主要都市はメダン、パレンバン、パダン。
■パレンバンの地理
パレンバンはインドネシアのスマトラ島の南側にある南スマトラ州の州都です。この都市はかつてはシュリーヴィジャヤという仏教徒の王国の一部で古代の首都でしたが、1025年にインド南部のチョーラ朝からの海賊の襲撃を受けたことによって次第に勢力を失いました。
1602年にはオランダ東インド会社が創立され、以降インドネシアは長年に渡りオランダの植民地であり続けたため、主要地であったパレンバンでは当時の洋式建築遺跡が見られます。市を東西に通過する形でムシ川が流れ、「ジュンバタン・アンペラ」と称する大きな昇降橋が街を結びます。
パレンバンの人口は、約150万人ほど。赤道に近い南緯3度に位置するので非常に暑いです。3月でも最高気温が31℃、最低気温は24℃ほど。
インドネシアは熱帯雨林気候なので、常に蒸し暑いです。皆既中は太陽が月によって隠されるため、直射日光が地表には届きません。観測前より5~10℃も気温の下がることがこれまでの観測から確認されています。
■パレンバンのDATA
パレンバンは、2016.3.9の皆既帯で最も人口が多い街。近隣には空港もあります。ホテルも充実しており、日本から直行便も運行しています。アクセスはNo.1ですが、3月の平均雲量は75%と高く皆既中の太陽高度も17度なので、パレンバンの衛星画像を参照して観測に役立てて下さい。
パレンバン市街自体も皆既帯の中に位置していますが、より継続時間が長く続くのは市外の北部になります。たまたまパレンバン空港が市街の北部にあり、2分弱の皆既日食が楽しめます。皆既中の太陽高度は空港北側の駐車場付近で17度になるので、参考までに1997.3.9にシベリアの荒野で撮影した太陽高度20度の皆既日食写真を右横に貼りました。
Palembang Airport(パレンバン空港北側の駐車場付近)
2° 53´ 37.4" S △T=68.2s
104° 42´ 13.7" E
Magnitude at mid eclipse : 1.01184%
Moon/Sun size ratio : 1.03242
total solar eclipse : 1m 59.9s
Event Date Time (WIB) Alt Partial
Sunrise 2016/03/09 06:10:00.0 -00.2° 0.00%
(C1) : 2016/03/09 06:20:31.2 +02.4° 0.00%
(C2) : 2016/03/09 07:20:44.8 +17.4° 100.00%
(MAX) : 2016/03/09 07:21:44.5 +17.7° 101.18%
(C3) : 2016/03/09 07:22:44.7 +17.9° 100.00%
(C4) : 2016/03/09 08:31:25.0 +35.0° 0.00%
パランカラヤ
■ボルネオ島の地理
ボルネオ島は、東南アジアにある島。南シナ海、スールー海、セレベス海とマカッサル海峡、ジャワ海とカリマタ海峡に囲まれています。インドネシア・マレーシア・ブルネイ、3か国の領土で、世界で最も多くの国の領地がある島。
面積は725,500km²で日本の国土の約1.9倍の大きさ。世界の島ではグリーンランド島、ニューギニア島に次ぐ、面積第3位の島です。
アルプス・ヒマラヤ造山帯と環太平洋造山帯の交点にあたる地域に位置し、全体的に山がちの地形です。また両造山運動の影響により、山脈が上空から見ると南北にK字になっています。1億年ほど現在の位置から動いておらず、温暖な気候を保つ事が出来たため、この島の熱帯雨林は世界最古の熱帯雨林と考えられています。
最高峰は島中央を貫くイラン山脈の北東部、マレーシア・サバ州に位置するキナバル山で、標高は4095m。インドネシア・カリマンタンの最高峰は、イラン山脈南部のラヤ山(標高2278m)です。石油、石炭、ダイヤモンド、金、銅、スズ・鉄、マンガン、アンチモン、ボーキサイトが産出されます。
ボルネオ島は熱帯気候で、降雨量は年平均4000mm。雨季は10月から3月頃までありますが、サバ州ではキナバル山の影響で年の前半はあまり雨が降りません。熱帯雨林が発達しており、北部にはスマトラサイ、ボルネオゾウが生息します。その他オランウータン、テナガザルなどの中大型哺乳類やワニ、ニシキヘビなどの爬虫類が生息しています。
一見すると緑豊かな土地ですが、高温多湿で雨が多い土地であるが故に落ち葉がすぐに腐り、腐葉土は雨に流され地上に堆積できず、落ち葉の直ぐ下は粘土質の土であるため、イチジク以外の果実は数年に一度しか実らない果実に乏しい森です。ここ50年程はパーム油の採取のために熱帯雨林を切り開いてアブラヤシを植えることが広まっており、自然破壊が懸念されています。
■パランカラヤの地理
パランカラヤは、インドネシアのカリマンタン島中部カリマンタン州の州都。人口は17万人います。1957年5月23日、中部カリマンタン州が創設。初代大統領のスカルノが、新しくできた州の州都として機能させるように街の建設を開始しました。当初はジャカルタに代わるインドネシアの首都として、その機能を移転させる計画でした。
パランカラヤは海から250kmほど離れますが、東部をKahayan川が蛇行しています。3~4月は雨季で朝からカミナリが鳴り、大雨が降る気候です。この時期は川の水かさが増して、一帯が水の下になっています。逆に8月9月は乾期で一番水が少なく、水不足になるのだそうです。その時期にジャングルの動物が、人里や水辺に現れます。鳥も食虫植物も水辺で見ることができるし、オランウータンや蛇と豹にも頻繁に会えます。
■パランカラヤのDATA
パランカラヤ近隣には空港もあります。ホテルも数多く充実していますが、3月の平均雲量は65%と高くなります。皆既中の太陽高度は28度と高く、皆既日食も2分30秒継続します。パランカラヤで観測を予定される方は、衛星画像を参照してください。雨期なので、皆既日食が見られる確率は低いでしょう。太陽高度30度ですと、まだ地平線の雲の影響があります。
パランカラヤ市街も皆既帯に位置していますが、より継続時間が長く続くのは市外の北部になります。たまたまパランカラヤが皆既中心線のわずか南側にあるので、皆既日食の継続時間に差はほとんどありません。月の南半分が北半分よりも若干大きさがあるので、かえって実際の皆既日食継続時間が延びる期待があります。参考までに、2001.6.21にアフリカ・ザンビアの首都ルサカで撮影した太陽高度30度で皆既中の本影錐の写真を右横に貼りました。
以下、パランカラヤのDATAです。(UTC+7)
Palangkaraya Airport
2° 13´ 24.0" S △T=68.2s
113° 56´ 54.2" E
Magnitude at mid eclipse : 1.01590%
Moon/Sun size ratio : 1.03576
total solar eclipse : 2m 29.5s
Event Date Time (WIB) Alt Partial
(C1) : 2016/03/09 06:23:29.5 +12.3° 0.00%
(C2) : 2016/03/09 07:28:59.0 +28.6° 100.00%
(MAX) : 2016/03/09 07:30:13.4 +28.9° 101.59%
(C3) : 2016/03/09 07:31:28.5 +29.3° 100.00%
(C4) : 2016/03/09 08:46:56.9 +48.1° 0.00%
スラウェシ島
■観測場所の天候
この皆既日食帯は、2016年3月9日に西大平洋を通過します。皆既帯の最初は熱帯収束帯が居座るインドネシアの島々を通過するので、この地域では雲間からの観測となるでしょう。Jay Anderson氏より抜粋した資料によると、赤道をまたいで熱帯収束帯が居座るインドネシアの島々では雲量が多くてあまり観測に向かないことが分かります。晴天率を求めるなら、ミクロネシア連邦の島々が最適です。皆既帯付近で一番晴れやすい地域は米領ウェーク島ですが、99%の部分日食となってしまいます。一番無難なのは、グアム島から船舶をチャーターしてマリアナ海溝付近の皆既帯に行くしかありません。ミクロネシア連邦に属するヤップ州の島々には僅かながら皆既帯が掛かる環礁があります。ここでは、皆既帯が通過する島と環礁について天候の概略と共に説明します。
■スラウェシ島の地理
スラウェシ島は、インドネシア中部にある島。植民地時代はセレベス島と呼ばれたが、インドネシア独立後はスラウェシ島と呼ばれます。一部が赤みがかったタロイモの品種であるセレベス芋は、この島が原産です。
スラウェシ島の面積は17万4600km²で、世界第11位、インドネシアでは第4位の大きさ。西にカリマンタン島、東にマルク(モルッカ)諸島、北にセレベス海を挟んでミンダナオ島、そして南にフロレス海を挟んで小スンダ列島(ヌサ・トゥンガラ諸島)があります。環太平洋造山帯とアルプス・ヒマラヤ造山帯の合流点にあるため地形は複雑で、アルファベットのKの字のような形状をしています。
全体的に山がちな地形で、標高3,455mのランテコムボラ山を有し、トウティ湖もあります。そのため各地域は交流が少なく独自性が強くなり、長らく島としての一体性が弱いです。島の東側の3つの湾(トミニ湾、トロ湾、ボネ湾)のうち、一番北のトミニ湾に浮かぶウナウナ島のコロ山は
1983年に大噴火がありましたが、全島避難により間一髪で人的被害を免れました。スラウェシ島の最大の都市は、南西端にあるマカッサル。その他の主要都市として南東部にケンダリ、北部のミナハサ半島にはゴロンタロやマナドがあります。
■皆既中心線が通過する都市の渡航情報 (Palu,Poso,Luwuk)
スラウェシ島の皆既帯は、中部スラウェシ州に沿っています。この州はスラウェシ島の中央部にあり、州都はパル。ポソ県のポソ市とバンガイ県のルワク市も皆既帯にあります。このうちポソ県とポソ湖は外務省からの通達で、2015年3月6日より中部スラウェシ州ポソ県の渡航情報を「渡航の是非を検討してください」に引き上げました。
ポソ県郊外にはイスラム過激派(東インドネシアのムジャヒディン:MIT)が潜伏していると見られ、警察官や住民への襲撃が度々発生しています。MITがISILへの支持を表明していることから、外務省は日本人を含む外国人を標的とする可能性もあると説明。インドネシア国家警察も2015年1月以降、本部機動隊を増派し、検挙活動を強化しています。
パルの人口は、約33.5万人ほど。赤道に近い南緯1度に位置するので非常に暑いです。パル湾の奥50kmに位置し、2000m級の山に囲まれた海あり山ありの風光明媚な街です。スラウェシ島の南部に位置し、南スラウェシ州の州都マカッサル(旧名ウジュン・パンダン)から飛行機で約1時間の距離にパル市があります。気候はマカッサルと異なり乾期は6月と7月の2ヶ月間だけで、大体毎日午後になると雨が降る山岳気候です。パルにはマカッサルの他に北スラウェシ州のマナド、ボルネオ島東岸にある東カリマンタン州に属する港湾都市バリクパパンからも飛行機が乗り入れています。
パルから中央スラウェシ州の東部の町ルワクには、メルパチ・ヌサンタラ航空が小型機を週3回程度運行しています。中部スラウェシ州では、ルワクの方が皆既継続時間が長くなります。
パルには行政各機関と大学、木材産業、カカオの出荷以外にあまり大きな産業はありません。経済的には同じ島内のマカッサルやマナドとのつながりよりもマカッサル海峡のカリマンタン側の対岸バリクパパンやジャワ島のスラバヤとの関係が深いです。海上交通の実態を調べるとスラウェシ島が一つの経済圏を構成しているのではなく、島の西側はカリマンタン島と、北スラウェシではマルク諸島やフィリピン方面と、スラウェシの南部では南のフローレス諸島とのつながりが大きいです。これはスラウェシ島の大半が急峻な山岳地形で陸上交通インフラが貧弱なため、実質的には各地域が近隣諸島との海上交易を中心にした個別の経済圏を構成しています。ポソでは暴動が長期的に続いていて、中部スラウェシ州は観光旅行延期勧告が出されています。
パル ポソ ルワク
■パルとポソとルワクのDATA
パル(Palu)は、インドネシアのスラウェシ島中部スラウェシ州の州都で人口は約33.5万人。ここを起点にすると、各地へのアクセスが容易になります。パル市街のDATAは、皆既中心線が近い南部のムティアラ空港を表示しています。皆既中心線に向かって南へまっすぐ伸びる道がありますが、ポソに近いので身の安全が脅かされます。
パルは治安が悪くポソは危険な街なので、皆既継続時間が長いルワクで観測するのもお勧め。
パル市の3月の平均雲量は62%で皆既中の太陽高度は37度。衛星画像を参照。
ポソ市の3月の平均雲量は60%で皆既中の太陽高度は38度。
ルワクの3月の平均雲量は59%で皆既中の太陽高度は41度。
Mutiara Airport Palu
(パルのムティアラ空港駐車場付近)
0° 55´ 12.4" S △T=68.2s
119° 54´ 23.5" E
Magnitude at mid eclipse : 1.00685%
Moon/Sun size ratio : 1.03793%
total solar eclipse : 2m 10.9s
Event Date Time (WITA) Alt Partial
(C1) : 2016/03/09 07:27:51.4 +19.2° 0.00%
(C2) : 2016/03/09 08:37:45.7 +36.7° 100.00%
(MAX) : 2016/03/09 08:38:50.9 +36.9° 100.68%
(C3) : 2016/03/09 08:39:56.6 +37.2° 100.00%
(C4) : 2016/03/09 10:00:36.9 +57.3° 0.00%
パルから飛行機が飛ばない日はルワクまでは、車で12時間ほど山岳ローカルバスのドライブになります。マカッサルからの飛行機も1日1便なので旅行は十分余裕をとった計画にしましょう。
右の写真は、ルワク北部の高台からルワク市街が撮影された写真です。未舗装で土の道路が広がりますが、地面はしっかりしていそうなので観測地に向く場所だと思います。ルワク市街より北へ行けば行くほど皆既継続時間が延びるので、水平線をバックにしたコロナの写真が撮れるかも知れません。
ガルーダ・インドネシア航空では、北スラウェシ州マナド市のサム・ラトゥランギ空港からルワクへ発着する路線が2015年内に増設されます。ちなみにルワク空港はルワク市外の南側にあり、皆既日食継続時間も市街より11秒も短くなります。
Luwuk city (ルワク市街)
0° 56´ 25.1" S △T=68.2s
122° 47´ 48.3" E
Magnitude at mid eclipse : 1.01357%
Moon/Sun size ratio : 1.03894
total solar eclipse : 2m 51.3s
Event Date Time (WITA) Alt Partial
(C1) : 2016/03/09 07:30:08.5 +22.7° 0.00%
(C2) : 2016/03/09 08:41:48.7 +40.6° 100.00%
(MAX) : 2016/03/09 08:43:14.0 +40.9° 101.35%
(C3) : 2016/03/09 08:44:40.0 +41.3° 100.00%
(C4) : 2016/03/09 10:07:16.3 +61.8° 0.00%
テルナテ島
■テルナテ島の地理
テルナテ島は、インドネシアのモルッカ諸島にある島。ハルマヘラ島の西海岸沖合10kmにあり、面積は106km²。人口は95,921人。中心都市はテルナテで島の東海岸にあります。テルナテ島の南には幅約1kmの海峡を挟んでティドレ島があり、この2つの島は大きさも地形もよく似ていて双子に喩えられます。島の最高峰は活火山のガマラマ山で標高1,715m。最近では1980年9月に大きな噴火があり、3万人が近くのティドレ島に避難しました。
バタビア航空がジャカルタ直行便を運航。ローカル航空会社の近隣便があります。島内はバスが走り、港がテルナテにあります。右写真のテルナテ港には、あちこちの島へ行くボートがたくさん出ています。この港から公共のボートに乗り、15分ほどでティドレ島に到着します。船に乗っている人たちは、テルナテ島へ買い出しや仕事に行っていた方がほとんど。ティドレ島はテルナテ島より田舎で、車でどこまで走っても家がひたすら並んでいるだけ。ホテルは、島に一軒しかありません。
テルナテ島から皆既日食継続時間の長いマキアン島までは船をチャーターした方が良さそうです。恐らく通常船舶の航路は無いものと思われます。現地でチャーター船の情報収集に努めた方が良いでしょう。
■テルナテ島~マキアン島のDATA
テルテナ空港は島の北の外れにあるので、より長い観測地を求めるなら港まで行かなければなりません。3月の平均雲量は62%と高くなります。
皆既中の太陽高度は47度と高く、皆既日食も2分44秒継続します。以下、テルナテ港のDATAです。
観測地は、 の印で表示しています。
マキアン島とモティ島の皆既日食継続時間は、ほとんど同じくらい。テルナテ港から船をチャーターするなら、モティ島南部の海岸で観測した方が良さそうです。モティ島の観測地は、漁港がGoogle earthから見えたので地盤が固い場所で観測出来ます。全ての島の山肌が海岸に迫っているので、地盤が固い漁港か港を観測地としました。
Ternate Port (テルナテ港)
0° 45´ 46.2" N △T=68.2s
127° 22´ 26.8" E
Magnitude at maximum : 1.00912%
Moon/Sun size ratio : 1.0454
total solar eclipse : 2m 44.3s
Event Date Time (WIT) Alt Partial
(C1) : 2016/03/09 08:36:02.1 +28.6° 0.00%
(C2) : 2016/03/09 09:51:35.7 +47.4° 100.00%
(MAX) : 2016/03/09 09:52:57.5 +47.7° 100.91%
(C3) : 2016/03/09 09:54:20.0 +48.0° 100.00%
(C4) : 2016/03/09 11:20:47.6 +69.3° 0.00%
Tidore South (ティドレ島南部)
0° 37´ 21.3" N △T=68.2s
127° 24´ 34.3" E
Magnitude at maximum : 1.01363%
Moon/Sun size ratio : 1.04055
total solar eclipse : 3m 05.9sテルナテ島~マキアン島の衛星写真…青線が皆既中心線Event Date Time (WIT) Alt Partial
(C1) : 2016/03/09 08:35:56.8 +28.6° 0.00%
(C2) : 2016/03/09 09:51:19.7 +47.3° 100.00%
(MAX) : 2016/03/09 09:52:52.2 +47.7° 101.36%
(C3) : 2016/03/09 09:54:25.5 +48.1° 100.00%
(C4) : 2016/03/09 11:20:42.0 +69.4° 0.00%
Moti South (モティ島南部)
0° 25´ 58.6" N △T=68.2s
127° 24´ 33.6" E
Magnitude at maximum : 1.01931%
Moon/Sun size ratio : 1.04054
total solar eclipse : 3m 16.4s
Event Date Time (WIT) Alt Partial
(C1) : 2016/03/09 08:35:46.7 +28.6° 0.00%
(C2) : 2016/03/09 09:51:01.9 +47.3° 100.00%
(MAX) : 2016/03/09 09:52:39.7 +47.7° 101.93%
(C3) : 2016/03/09 09:54:18.2 +48.1° 100.00%
(C4) : 2016/03/09 11:20:26.9 +69.3° 0.00%
Makian Nouth (マキアン島北部)
0° 22´ 21.5" N △T=68.2s
127° 25´ 12.2" E
Magnitude at maximum : 1.01931%
Moon/Sun size ratio : 1.04054
total solar eclipse : 3m 16.4s
Event Date Time (WIT) Alt Partial
(C1) : 2016/03/09 08:35:44.3 +28.6° 0.00%
(C2) : 2016/03/09 09:50:59.1 +47.3° 100.00%
(MAX) : 2016/03/09 09:52:36.9 +47.7° 101.93%
(C3) : 2016/03/09 09:54:15.5 +48.1° 100.00%
(C4) : 2016/03/09 11:20:23.7 +69.4° 0.00%
ハルマヘラ島
■ハルマヘラ島の地理
ハルマヘラ島はインドネシアのモルッカ諸島にある島。面積は17,780km²で、モルッカ諸島最大の島。北東は太平洋に面し、南東はハルマヘラ海、西はモルッカ海峡・モルッカ海があります。人口は449,938人(2010年)。住民の8割はムスリムで、残りの2割はキリスト教徒が占めます。最近では、2007年に噴火した島の最高地点であるガムコノラ山(標高1560m)の他に活火山があります。
ハルマヘラ島は山がちで、全島を熱帯雨林に覆われます。この地域の中心は、ハルマヘラ島の西海岸沖に浮かぶテルナテ島とティドレ島。どちらも面積100km²あまりの小島ですが、丁子の原産地として香辛料貿易で栄え、ハルマヘラ島を含めたインドネシア東部全域に勢力を広げました。16世紀初めにポルトガル人がやってきて以来、モルッカ諸島は西洋諸国による支配権争いの舞台となり、最終的にオランダ領東インドに組み込まれました。インドネシア独立後はマルク州に含まれていましたが、1999年に成立した北マルク州の一部になります。
北マルク州の治安状況は概ね落ち着いており、同州への外国人の立入規制はありません。過去にはハルマヘラ島の一部地域において爆弾事件が発生したほか、2005年6月にテルナテ島の州警察本部に手榴弾が投げ込まれるなどの事件が発生しています。インドネシアはどの地域に行っても外務省の通達により、十分注意してくださいと渡航情報が出ています。夜間の一人歩きや不要不急の外出は避けた方が良いでしょう。
ハルマヘラ島のうち、Mabaと言う街が一番皆既日食継続時間が長いです。しかし、船舶しか交通手段が無い状態です。テルナテ空港のような比較的大きな空港もありません。ハルマヘラ島自体は空港が3箇所あるのですが、いずれも皆既帯から遠く皆既帯の外側に位置します。念のため、MabaのDATAも以下に書き記します。右上の画像は、美しいMabaの海岸線と景色…この画像の南部が下の写真とつながります。
Maba Town (マバの海岸)
0° 45´ 46.2" N △T=68.2s
127° 22´ 26.8" E
Magnitude at maximum : 1.00912%
Moon/Sun size ratio : 1.0454
total solar eclipse : 2m 44.3s
Event Date Time (WIT) Alt Partial
(C1) : 2016/03/09 08:36:02.1 +29.8° 0.00%
(C2) : 2016/03/09 09:52:58.5 +48.6° 100.00%
(MAX) : 2016/03/09 09:54:38.1 +49.1° 100.91%
(C3) : 2016/03/09 09:56:18.4 +49.5° 100.00%
(C4) : 2016/03/09 11:23:05.4 +70.8° 0.00%
ファニ島
ハルマヘラ島のMabaから東北東へ約400kmのところにファニ島とイギ島と言う小さな小島があります。そこから南へ100kmほど行くと西パプア州のワイゲオ島があります。この絶海の孤島に皆既帯が通過します。ファニ島とイギ島ともう一つの名もない島を併せて、アシア諸島と呼ぶそうです。右の衛星画像を参照。
ファニ島の長さは4.4kmで、幅は500mほどあります。そこではヤシの木、パンノキ、里芋、そしてサンゴの木が生い茂り、約2mほど地中を掘れば水が湧きます。川や洞窟などはなく、海岸は岩だらけです。有人島ですが、わずか11世帯しか住んでいません。住民はパプア言語を用い、キリスト教を信仰しています。島の周りはサンゴ礁で囲まれています。太陽光発電に頼っており、レニ村では3000ワット220ボルトの電気が使えます。
集落はファニ島の南部しかないので、ここがレニ村だと思います。衛星画像を注視して見るとレニ村には船着き場があるそうです。西パプアのソロンから真北へ300kmにアシア諸島があるので、航空便のあるソロンを拠点にして船をチャーターすればここでの観測が叶うかも知れません。パレンバンからソロンまでは、Sriwijaya Air が直行便を毎日運航しています。
ミクロネシア皆既日食
ミクロネシア皆既日食の概要 (UTC+10)
■観測場所の天候
この皆既日食帯は、2016年3月9日に西大平洋を通過します。皆既帯の最初は熱帯収束帯が居座るインドネシアの島々を通過するので、この地域では雲間からの観測となるでしょう。Jay Anderson氏より抜粋した資料によると、赤道をまたいで熱帯収束帯が居座るインドネシアの島々では雲量が多くてあまり観測に向かないことが分かります。晴天率を求めるなら、ミクロネシア連邦の島々が最適です。
皆既帯付近で一番晴れやすい地域は米領ウェーク島ですが、99%の部分日食となってしまいます。一番無難なのは、グアム島から船舶をチャーターしてマリアナ海溝付近の皆既帯に行くしかありません。ミクロネシア連邦に属するヤップ州の島々には僅かながら皆既帯が掛かる環礁があります。ここでは、皆既帯が通過する島と環礁について天候の概略と共に説明します。