アイヌ音楽は、アイヌの生活文化の中で生まれた音楽である。文字を持たない狩猟採集民族であるアイヌは音楽も全て口伝したため、その起源はいまだにはっきりしていない。近年様々な研究者によって聞き取り調査され、文字化されるようになった。
ウポポとは、「歌」を意味する。「座り歌」と訳されることもある。一種の輪唱の形式をしたもので、成句一つだけで歌われていることが多い。
穀物を臼に入れて数人できねつきし、製粉、精白する際に歌われるイウタウポポ(杵歌)、舟こぎ歌のような労働歌もあれば、踊りながら歌う「リㇺセウポポ」、数人でシントコ(和人との交易で入手した漆塗りの容器)の蓋を囲み、手をたたいて拍子をとりつつ唄う輪唱「ロック・ウポポ」などがある。いずれにしろ即興性が高いのが特徴である。
踊りは、式典の種類に応じて踊ることが決められたものもあれば、約束事がなく人が集まればいつでも踊られうるものもある。決まっているものとしては、イヨマンテの際に踊られるイヨマンテリムセー、祭りの準備作業に伴う「酒造りの踊り」や「杵搗きの踊り」などがある。一方、ホリッパ(輪踊り)は、葬式のときを除けばいつでも踊られるものである。