30年にわたり弘前大学のねぷた絵を手がけている青森県弘前市のねぷた絵師、聖龍院龍仙さん(73)が、自宅アトリエで制作に打ち込んでいる。弘前ねぷた合同運行は中止が決まっており、弘大ねぷたも運行されることはないが「新型コロナウイルス滅敵」の願いを込め、古代中国の医学と農業の神「神農」を題材に描いた鏡絵が6月22日に完成した。
今年のねぷたは中止と決まったが、同大から依頼を受けた聖龍院さんは今月第3週から制作を開始した。高さ4m80cm、幅7mの大型ねぷたサイズの紙に、下絵なしで描いていくのが聖龍院さん流。中央に薬草をつかさどる神様「神農」を力強く描いた。随所に朝鮮ニンジンや霊芝(れいし)といった薬用植物を配し、病気に負けないという強い意志を表現した。
龍仙さんは「あらゆる事象の中で、疫病が最も恐ろしいと気づいた。今、世界が直面する大きな壁を乗り越えることは大変だが、ウイルス滅敵の意気込みで一気に描いた」と話した。見送りは風神雷神を描く。
弘前大学によると7月下旬には鏡絵、袖絵、見送り絵がそろって弘大に届けられ、歴代のねぷた絵と同様に図書館で保存される予定。総務部の後藤真吾人事課長は「急な依頼にもかかわらず、私たちの要望に応えてくださりありがたい」と感謝。ねぷた絵の活用に関して「何らかの形で前向きに検討したい」と話した。