酸ヶ湯は、三百年も昔から開かれていた山の温泉宿。十和田八幡平国立公園の北部、八甲田の主峰大岳の西麓に位置する、標高約900mの清涼な高地にある。
江戸時代前期の1684年(貞享元年)の開湯と伝承される。非常な山奥にもかかわらず、古くから湯治場として訪れる者が多かった。
大正時代、この温泉宿を経営していた郡場直世の妻・フミは、近辺の高山植物を採集してその標本を各地の研究機関に寄贈した。彼女の功績によって早くから八甲田山の植生が研究されており、そのため酸ヶ湯温泉の付近に東北帝国大学の研究施設(東北帝国大学八甲田山植物実験所、現在の東北大学植物園八甲田分園)が作られた。また彼女の息子・郡場寛は植物学者でもある。1954年(昭和29年)、四万温泉、日光湯元温泉と共に国民保養温泉地第1号に指定されている。