テレビで観戦していた相撲ファンの話。
「向正面左側の溜席に、和装の美しい女性が4人並んで座っていたのです。特に右端の若い女性は、鬘を被り、白粉まで塗っていて目を引きました。東側の力士の表情がアップになるたびに、その女性の顔も同時に何度も画面に映り込む。時に眠そうな表情も見せるのですが、それも可愛らしくて」その晩、相撲ファンが集うネット上の掲示板でも、「この女性は誰だ」という話題でもちきりだった。
花柳界関係者の解説。
「客席にいたのは、新橋の芸者さん達です。座席の左から、尾上流の君二郎、花柳流の秀千代、尾上流の小福、そして件(くだん)の白粉の女性は、西川流の寿々女(すずめ)です。この日はお客さんに誘われて行ったと聞いています」
別の関係者が後を受ける。
「寿々女は青森県の弘前市出身。中学校を卒業し、京都で芸者修業を積むも20歳で引退しました。1年の休養を経て、大好きなお稽古事が忘れられず、新橋花柳界で復帰することに。凛とした佇まいが人気を博し、一流の料亭に引っ張りだこ。『新橋の宝物』と評される若手のホープですよ」
ところで、4人の芸者のうちなぜ寿々女だけ、今や舞台や特別行事でしか見せない“正装”だったのかというと、「40代前後の若いお客さんの中には、“芸者は鬘に白粉”というイメージが強く、お支度代を払ってリクエストする人も少なくない。彼女のお客さんも若い方が多いと聞きますから、要請があったのでは」