ブータンは、気候・植生が日本とよく似ている上に、仏教文化の背景も持ち合わせており、日本人の郷愁を誘う場合も多い。これはモンスーン気候に代表される照葉樹林地帯(ヒマラヤ山麓-雲南-江南-台湾-日本)に属しているためで、一帯では類似の文化的特徴をみいだすことができる。
食文化においては、ブータンの主食は米。トウガラシの常食と乳製品の多用という独自の面を有しつつ、赤米を中心に、パロ米(日本米)、プタ(蕎麦)の栽培、リビイッパ(ブータン納豆)、酒文化(どぶろくに似た醸造酒「シンチャン」や焼酎に似た蒸留酒「アラ」)などの日本人の琴線に触れる習慣も多い。また、伝統工芸においては漆器や織物などの類似点もある。
伝統的な競技としては国技の弓術が代表的である。子供はダーツのような「クル」、石投げなどで遊ぶ。武器の扱えない僧侶は石投げに興じることが多いが、近年では聖俗問わずサッカー人気も高い。特に、サッカーや格闘技は、ケーブルテレビの普及以降、爆発的に人気を獲得した。
近代化の進むなか、チベット仏教は現在でも深くブータンの生活に根差している。ブータン暦の10日に各地で行われるツェチュという祭は今でも交際の場として機能している。その他、宗教的意匠が身近なところにあふれ、男根信仰も一般的である。宗教観や古い身分制度に基づく伝統的礼儀作法(ディクラム・ナムザ)は厳格で、国家公務員の研修や学校教育に取り入れられている。公的な場所に出るときは正装が義務付けられる。