菊紋のうち、八重菊を図案化した菊紋である十六八重表菊は、日本の天皇および皇室を表す紋章である。俗に菊の御紋とも呼ばれる。親王などの皇族はこの紋の使用が1869年(明治2年)の太政官布告をもって制限され、1926年(大正15年)の皇室儀制令(大正15年皇室令第7号)13条発布を経て「十四裏菊」や「十六裏菊」に独自の図案を加えたもの(有栖川宮家・伏見宮家など)や「十六八重表菊」を小さな図案によって用いたもの(秩父宮家・三笠宮家・久邇宮家など)を各宮家の紋としている。
現在でも日本の在外公館の玄関には、日本の国章の代わりとして菊花紋章の浮き彫りがある。また、日本国発行の旅券の表紙にも「十六一重表菊」をデザイン化したものが使われている。国会議員の議員記章には「十一菊」の図案が使用されている。自民党の党章も、「陰十四菊」の中央に“自民”の文字を入れたものである。そのほか、菊花紋は日本の勲章の意匠にも取り入れられるなど、菊は桜と並び、国花に準じた扱いを受ける。日本の国章に準じた扱いを受け、法的には国旗に準じた扱いを受けるため、それに類似した商標等は登録できない(商標法第4条第1項第1号)。国際的にも、十六八重表菊は、工業所有権の保護に関するパリ条約第6条の3に基づいて、1967年に同条約の同盟国に通知されており、これらの国では商標登録をすることができない。