パンドラ (Pandora) は、土星の衛星。土星からの距離は、141,700 kmで、直径は約84km。名称はギリシア神話に登場するパンドラという女性に由来する。外側を回る別の衛星には彼女の夫であるエピメテウスの名が付いている。
パンドラは、1980年にコリンズらがボイジャー1号の撮影した写真を分析する中で発見された。最初に仮符号S/1980 S 26が与えられ、1985年にはパンドラが正式名称となった。ボイジャー2号の観測では大まかな形状が撮影されたのみだったが、2005年のカッシーニ探査機による接近観測で詳細な姿が明らかにされた。
自己を球形に保つほど重力が大きくないため歪な形をしており、差し渡し103×80×64 kmの楕円体に近似される。表面には直径30kmの2つのクレーターなどの地形が見られ、細微な氷の塵に覆われていると考えられている。平均密度が0.5g/cm3と低く内部に間隙を多く含んだ氷の天体であることが示唆される。また、他の多くの土星の衛星と同様に、土星からの潮汐力のためパンドラの自転周期と公転周期は等しくなっている(自転と公転の同期)。
パンドラはミマスやエンケラドスなどの大衛星より土星に近い位置にある。その軌道はFリングのすぐ外側に存在し、羊飼い衛星としてリング構成粒子の逸散を防ぐ役割を果たす。公転軌道は、Fリングの内側を周回するプロメテウスの重力によって常に変動し、特に6.2年ごとに2つの衛星が接近する際には軌道要素に大きな変化が生じる。また外側を回るミマスとは、公転周期が2:3の共鳴関係にある。