水星の地形は1975年のマリナー10号による観測で得た情報から基本的な部分が明らかになった。水星の地表は月の地表と似ており、その特徴は、数十億年単位時間を経て形成される月の海のような平滑面や、全球を覆うさまざまな大きさのクレーターが数多く存在している。その中でも最も目に付くものは、惑星直径の1/4以上に相当する直径1,300kmほどのクレーター群から成るカロリス盆地である。これは、46億年前に水星が形成されて間もなく始まり38億年前まで続いた後期重爆撃期に彗星や隕石が衝撃を和らげる大気が無い水星に衝突を繰り返すことでクレーターを形成し、当時まだ活発だった火山活動によって盆地がマグマで埋まり形成されたと考えられる。
水星の表面は、異なる時代にできた二つの表面によって覆われている。若い方の表面は溶岩が流れ出して形成された軽い地表であり、古い地表よりクレーターが少ない。このような二分化された地形は月の高地-海の関係に似ているが、水星に見られる新旧の地表の違いは月の場合ほど明確ではない。
水星の地表を特徴付けるもう一つの地形は、惑星の広い範囲に散在する高さ約2km、長いものでは500kmにもなる断崖(線構造)であり、リンクルリッジと呼ばれる。これは水星の内部が冷却され、半径が1-2kmほど縮む過程で形成された「しわ」であると考えられているが、太陽の潮汐力の影響という異説も存在する。断層のパターンについて詳細に分析できるようになれば、地形の正確な起源が明らかになると考えられている。太陽の潮汐力は地球が月に与える力の約17倍と推測され、そのために水星では赤道部分が膨らむ潮汐変形が起きている。