水星表面の平均温度は 452K(179 ℃)であるが、温度変化は 90-100 K から 700 K に及ぶ。水星は公転と自転が共鳴しているため、近日点において特定の2箇所が南中を迎え最高温度の700Kに達する。この場所は「熱極」と呼ばれ、カロリス盆地とその正反対側が当たる。遠日点では500K程度になる。日陰部の最低温度は平均110Kほど。太陽光は地球の太陽定数の4.59-10.61倍に相当し、エネルギー総計では 3,566 W/m2 となる。
このような高温に晒されながら、水星には氷の存在が確認されている。極に近く深いクレーターの中には太陽光が当たらない永久影となる部分があり、温度が102K以下に保たれている。これは1992年、ゴールドストーン深宇宙通信施設の70m電波望遠鏡と超大型干渉電波望遠鏡群 (VLA)が、水の氷による強いレーダー反射を観測して確認された。天文学者は、水の氷が存在する可能性が最も高いと考えている。2012年6月、メッセンジャーが撮影した極地の画像により、氷が存在する可能性が裏付けられたとジョン・ボブキンス大学などの研究チームが発表した。この氷の量は10×1014-10×1015kg程度であり、レゴリスが覆うことで昇華から防がれていると考えられる。地球の南極に存在する氷は4 ×1018kg、火星の南極には10×1016kg程度の水の氷があると言われる。水星の氷の起源は不明だが、彗星の衝突もしくは水星内部からの放出で生まれたという説が有力。
クレーターの内部には日が差さないため、氷が解けない。