丈夫さとかさばらない手頃な大きさの懐中時計は腕時計が登場するまでは携帯時計の代表として長い間、世界中で使用されてきた。多くの場合文字盤はアナログ式で鎖や組紐などで竜頭のフック部と衣服を結着して落下を防止し時計本体は衣服のポケットに収納して携帯するようになっているものが基本形であり、大きく分けて以下のような外面上の区別がある。用途や製作側や愛用者の個性により竜頭の位置が12時の位置だったり、3時の位置だったり、6時の位置だったりする。
現在、懐中時計の需要が最も高いのは鉄道で、視認性の高さや耐磁加工を施しやすい特性から、鉄道時計として職員が使用する。機関車・電車等の運転台には多くの場合、計器板の中央、あるいは窓脇の時刻表立て付近に懐中時計に合わせたサイズの窪みが作りつけられており、運転士はここに自分の懐中時計を置いて計時しながら列車を運転する。かつては懐中時計を鉄道事業者が購入し、運転士や車掌ら鉄道職員に貸与することが世界各地の鉄道で行われ、鉄道員たちは駅や詰所に設置された標準時間を示す掛時計を定期的に確認して、懐中時計の時刻合わせを行った。ダイヤグラムに沿った定時運行(駅への停車を完了し乗降処理をし発車するまでが秒単位で決められている)を励行する見地からも鉄道時計の精度は重要で、特に19世紀末から20世紀前半、鉄道会社に制式品として採用されることは時計メーカーにとって技術水準を示すステータスであった。近年はクオーツ腕時計の普及もあって、腕時計を携帯し鉄道時計は持たない運転士や据え置き型時計を運転台に置く運転士も多い。また最近は、電波時計も普及してきた。路線バス乗務員も同様。