鶏卵は、ニワトリの卵である。生で、または加熱した料理とされる。単に「卵」と呼ぶ事が多い。殻を割った中身は黄身と白身に分かれている。生の卵を溶いたものを「溶き卵」と言う。
鶏卵は栄養価が高く、特に良質な動物性タンパク質を豊富に含むほか、卵黄にはビタミンA、ビタミンD、ビタミンEや、リン、鉄、亜鉛や銅といったミネラルが含まれている。また全卵において必須アミノ酸が散在するが、特に卵黄に多く含まれる。世界的にも動物性のタンパク質の摂取源として一般的な食材である。ベジタリアンにも、無精卵だけは動物を傷つけることなく入手できる食材として、食べてもよいとする主義もあり、中国の精進料理でも使われる例がある。また割球の起こっていない無精卵は単細胞であり、この単体で1つの細胞である。
栄養バランスが良いことから完全栄養食品と言われる。しかし必要な栄養素のうち、ビタミンCや食物繊維、カルシウムなどは不足している。ただし酢やクエン酸などの有機酸に溶かす、砕いて粉末にするなど何らかの方法で卵殻まで摂取するならカルシウム不足はある程度解消される。
鶏卵は卵殻、卵白、卵黄から成る。卵殻は主に炭酸カルシウムから成る多孔質の殻で、外部から酸素を取り込み、胚の呼吸によって生じた二酸化炭素を放出できるようになっている。卵殻の内側には卵殻膜と呼ばれる薄皮がある。卵白は粘度の高い「濃厚卵白」と、粘度の低い「水様卵白」から成る。
卵黄はひも状の「カラザ」(卵帯)によって卵の中心に固定されている。カラザは日本語で「殻座」あるいは「殻鎖」と書かれることもあるが、実際はギリシア語由来の「chalaza」(χάλαζα : 霰の意)の音写であり、漢字での表記は当て字。生食の際には「消化が悪い」等の理由で除去される場合もあるが、その成分は通常の卵白とほぼ同じであり、消化のスピードに留意するほどの違いはない。その内部には通常の卵白にはないシアル酸が豊富に含まれている。卵黄の中心付近には、直径5mm程度の「ラテブラ」(latebra) と呼ばれる組織がある。「ラテブラ」はゆで卵にしても完全には固まりきらないという性質がある。
卵黄は肉眼では液状のように見えるが、顕微鏡等で拡大すると「卵黄球」という粒状の物体が集まったもので出来ていることが分かる。卵黄球は衝撃に非常に弱い(10㎝程度の高さから落下しただけで潰れてしまう)ため、ショックを与えずに加熱調理すると解けるようなふんわりとした食感の黄身に、逆にショックを与えるとねっとりとした食感の黄身になる。卵黄球の数はサイズの大小に関わらずおよそ180万とされている。