幽霊とは、何かを告知したり要求するために出現するとされていた。
その後次第に怨恨にもとづく復讐や執着のために出現しているとされ、
凄惨なものとされるようになった。
「いくさ死には化けて出ない」との言い伝えもあるが、平家の落ち武者や大戦での戦死者のように、死んだときの姿のまま現れると言われる幽霊も多い。幽霊の多くは、非業の死を遂げたり、この世のことがらに思いを残したまま死んだ者の霊である。その望みや思いを聞いてやり、執着を解消し安心させてやれば成仏する。
日本で葬式の際に願戻し、死後の口寄せ、あるいは施餓鬼供養などを行うのは、ある意味で死者たちが成仏しやすくしてやり幽霊化するのを防ぐことだと言える。
日本は島国なので、海の幽霊の話も多い。船幽霊とも言う。その内容は幽霊船が現れて幽霊が「柄杓(ひしゃく)を貸してくれ」というが、それを渡すとその柄杓で水を汲んで水船(水没してゆく船)にされてしまうといい、幽霊には柄杓の底を抜いてから渡さなければならないとする。紀州に伝わる話では、幽霊船が出たら構わずぶつかってゆけば消えてしまう。幽霊は室町時代以降、歌謡や歌舞伎のテーマとしても扱われるようになった。
出会った時点では幽霊であるとは気づかず後になってから、既に亡くなった人物であったと気づく話は、古代から現代にかけて語られている。
江戸時代以前から怪談という形で伝承され、江戸時代には幽霊話が大流行し、雨月物語、牡丹燈籠、四谷怪談などの名作が作られ、講談・落語や草双紙・浮世絵で描かれ花開き、現在も題材として新作から古典の笑話・小説・劇などに用いられ、その他の様々な媒体で登場し紹介される。