京うちわの始まりは、南北朝時代に遡ります。当時、中国や朝鮮沿岸を荒らし回っていた日本人の海賊によって、西日本にもたらされた朝鮮団扇が紀州から大和を経て、京都の貴族の別荘地であった深草に伝わったのが始まりと言われています。柄が中骨と一体ではなく後から取り付けられる挿柄という構造が、京うちわ独特のものに定着したのは江戸時代以降のこと。これは宮廷のための絵を描く土佐派、狩野派等の絵師が絵を描いた「御所うちわ」が始まりと見られています。間もなく庶民の使う京うちわとしても広まり、今日の京うちわの基盤が確立されました。
京うちわは豊かな風土と文化・歴史に育まれながら、今日もなお作り手たちの技と心で常に新しいデザイン感覚を付け加えています。単に涼むための用具としてだけでなく、優れた美術工芸品として私たちの目を楽しませ、生活に華やかさと潤いを与えてくれます。