冷風扇は、水が蒸発する際に気化熱を奪うことを利用し、主に家庭用の簡易な冷房装置。水冷式冷風機と称されることもあるが、水熱源ヒートポンプパッケージ方式(水冷エアコン)、冷風機と紛らわしいため呼び方としては好ましくない。どちらも原理効果ともに異なる。
液体である水が蒸発して気体である水蒸気に相転移する際に気化熱を奪うが、この熱は潜熱として水蒸気中に蓄えられるので、部屋全体で見れば熱を逃がしたことにはならない。また水蒸気が増えるということは湿度が高くなることであるので、密閉された場所や湿度が高い場所で冷風扇を用いても、より蒸し暑くなるだけに終わってしまう可能性が高い。
水分を含んだフィルターは、水の蒸発によってそこを通る風を冷却する。これは打ち水で涼しくなる原理に相当し、本質的に冷風扇はこの効果をねらったものである。しかし一般に高温多湿である日本の夏においては、若干の室温低下による冷房効果よりも、湿度を低下させてサラッとした乾いた雰囲気にした方が、体感的には快適であることの方が多い。気化熱による体温低下をねらうのであれば極端な話、水で絞ったTシャツを着て軽く扇風機の風を当てた方が効果的である。
以上のような湿度上昇効果と冷却効果との兼ね合いやバランスが、冷風扇の実用上の大きな問題となる。一般的には蒸し暑い時の冷房効果は皆無に等しく、「暑いがカラッとした天気の日」において、風通しのよい室内で補助的に用いるのが効果的といえる。締め切った室内で用いるには適さない。
温暖湿潤気候の日本では、夏は既に湿度が飽和状態に近く、蒸発用のフィルターを通しても水が蒸発する程度は低い、あえて蒸発させたいならば熱する必要がある。もちろん、そんなことをすれば部屋の気温が上がり、冷風装置の意味を成さない。したがって気化熱にほとんど冷却効果は期待できず、その冷却効率は到底エアコンには及ばない。しかし砂漠地帯(北アフリカ、中近東やメキシコ)のような乾燥高温地帯においては、この原理でかなりの室内冷却が可能であり、一般家庭では水の気化熱を利用したクーラーが一般的である。