いまアイヌ民族の若者たちを中心に、これまでのアイヌ文化をアレンジし新たな表現を創造しようという動きが活発になっている。彼らに共通するのは「このままではいけない」という危機感。伝統のアイヌ文化の後継者は高齢化が著しい。だが伝統を守るだけでは、自分たちの世代に響かない。伝統と自分たちの表現の狭間で迷いながら、彼らは自分たちのやり方でアイヌとしてのアイデンティティーを模索し、アイヌとして生きていこうとしている。
同世代の若い日本人に、ダンスや音楽を通じてアイヌ文化を知ってもらいたいと活動するのは、酒井厚司さん・美直さん兄妹を中心に、首都圏に住むアイヌの若者たちが作ったパフォーマンスグループ、AINU REBELS(アイヌ・レブルス)。伝統の踊りをヒップホップの音楽にのせて踊りながら、アイヌの精神や文化を伝えるステージを作り演じている。
アイヌ文化振興法が制定されて20年、アイヌを好意的にとらえる見方は広がりつつある。しかしアイヌの人たちが、誇りを持って自らのアイデンティティーを形成していくことができる社会にはなっていない。アイヌであることを宣言しアイヌとして生きる彼らは、どのような葛藤を抱えどのような未来を夢見ているのだろうか。