淡白な味わいと評されるフグだが、ほんのりとした上品な甘さがその醍醐味だ。コラーゲンが豊富でお肌にもいい。とらふぐ、さばふぐ、からとふぐなど、フグの種類は2700種類といわれているが、中でも身が厚いとらふぐはてっちりには一番適している。
まずは鍋に水と昆布を入れ、火にかける。昆布は少しで十分だ。沸いたら、フグのアラと白菜の芯から鍋に入れていこう。続いて、20種類以上の中から選んだという絹豆腐、吉野のくずきりを入れる。「昆布にはフグのアクを吸い取る役目もあるんですよ」と西島さんが教えてくれた。
そして、てっちりと言えばポン酢がつきもの。優しい味わいのフグの旨さを引き立てる名脇役であり、ポン酢がその店の味を支えると言っても過言ではない。「づぼらやのポン酢は、後継者のみが知る一子相伝の製法です。コクがありすぎず、塩味がしっかりとしているのが特徴です」と西島さん。
手搾りしたスダチの果汁は甕に入れて熟成させる。寝かせることで、キリリとした酸味が、まろやかな酸味に変化し、コクが生まれる。今年、昨年、一昨年のものをブレンドし、酸味と香りを調整している。コクを感じるが、ダシは一切使っていないのだとか。
づぼらやには珍しい具材が入っているのも特長だ。それがナス。昔からナスにはフグ毒消しの作用があるとされてきたためだ。「ナスは鍋には合わないんです。味はイマイチかもしれません。そこで、一度、ナスを入れるのをやめたことがあるんですよ。すると常連のお客さんから『わしを殺すのか』とクレームが来たんです。やっぱり、てっちりにはナスは必要なんですね」と西島さんが面白いエピソードを教えてくれた。