テクノが主流の80年代に、ホール&オーツは費用のかかる分厚いバックのミュージシャンたちに支えられていた。ここに彼らの成功の秘訣があったのだと考えている。もちろん、彼らもリズムボックスやシンセを使っているのだが、基本は凄腕のミュージシャンたちによる人力演奏が中心であった。
他のグループが流行のチープな音でライヴをやっている時に、70年代前半のようなバンド編成でロックスピリットにあふれた演奏を繰り広げていたのである。彼らのライヴを観ると、やっぱりロックは人力による演奏が一番だってことを再認識させられる。
アルバムの構成は、特に流行りの音を採り入れているわけではなく、彼らのルーツであるソウル(特にフィラデルフィアソウル)をベースに、優れたポップソングをちりばめるという、いたってシンプルな組み立てだ。
良い曲を書くことがいかに難しいかは、音楽ファンとして想像できるが、ここではタイトル曲の際立った出来はもちろん、多くの曲がとてもよく練り上げられていて、彼らふたりがもっとも乗っていたことが推測できる佳曲が揃っている。
この頃にはバックを務めるミュージシャンが固定されており、ベースのTボーン・ウォーク、ドラムのミッキー・カーリー、サックスのチャーリー・デシャントらの活躍も見逃せないところで、随所に絶妙のサポートを見せている。
Hall & Oatesのヒット曲には、サックスのチャーリー・デシャントの音が際立って良く耳に残る音となった。