リンゴの生産量全国一の青森県。リンゴ産業の後継者を育成してきた弘前実業藤崎校舎の最後の生徒12人が2019年3月3日に卒業式を迎え、リンゴの栽培技術や農業の知識を学んだ学舎を巣立つ。
同校舎は、リンゴの主力品種「ふじ」が誕生した旧農林省園芸試験場東北支場の敷地跡にある。
1948年に定時制の黒石高藤崎分校として開校。1972年に全日制の五所川原農林高藤崎分校に移行し、リンゴ栽培を専門的に学ぶ「りんご科」が設置された。
全国的にも注目を集めたのはユニークな教育内容だ。同科の生徒には1人1本のリンゴの木が割り当てられ、授粉や摘果、冬の剪定(せんてい)講習などを受けながら「マイツリー」として3年間育てる。収穫したリンゴは修学旅行先で販売するなど、栽培から販売までのノウハウを身につけてきた。
最盛期は3学年で約360人が学び、これまでに同科の生徒2305人を含む3593人が卒業。しかし、少子化による生徒数の減少に歯止めがかからず、県教育委員会は2012年の県立高校再編計画で、今年度末での閉校を決めた。
教育内容の一部は約10キロ離れた県立柏木農業高(平川市)が引き継ぐ。関係者らは「りんご科」の軌跡を後世に残そうと、校内の農場に植えられていた主力品種「ふじ」の原木のDNAを受け継ぐ木を柏木農業高に移植。農場で見つかった「ふじ」の枝変わり品種を校舎名にちなんで「藤巧者(ふじこうしゃ)」と名付け、品種登録を出願した。