こうして岡江さんとともに「はなまるマーケット」という番組をスタートした。石川氏は、岡江さんに対してほとんど指示をしなかったというが、「唯一お願いしたこと」があるという。
「岡江さんには、『番組のオープニングで、昨日あったことや最近感じたことを、フリートークで薬丸さんと話してください。時間は短くても長くても構いませんから』とお願いしました。番組冒頭の他愛もない会話が視聴者に受け、このオープニングトークは後に好評となりました。
これまで様々な芸能人の方と仕事をしましたが、岡江さんほどこちらの伝えたいことを素早く理解して表現してくれる方はいないんです。慌て者でおっちょこちょいと思われがちですが、とても聡明な方ですよ」
ベイ・シティ・ローラーズの「二人だけのデート(I only want to be with you)」をバックに「はなまるマーケット」のオープニングトークは始まる。そして、番組開始の合図は、岡江さんがリードする「はなまるマーケット、オープン!」というタイトルコールだった。
「17年間でお茶の間にも定着したこの掛け声は、実は岡江さんが発案なんです。番組スタート前日のリハーサルで、岡江さんが『何か掛け声がないと始めにくい』とおっしゃって。それでいろいろ考えたのですが、最終的に岡江さんから『(はなまる)マーケットだから、スタートじゃなくてオープンがいいね!』と言われて、あのような形になりました」
突然の訃報に肩を落とす石川氏だが、岡江さんについて、ずっと気になっていたことがあるという。
「岡江さんの訃報を伝えるとき、NHKやほかの民放まで『はなまるマーケット』という番組名を伝えていた。岡江さんを代表する作品になったことは誇らしく思います。一方で、声を掛けた初代プロデューサーとしては、岡江さんに17年半もこの番組に付き合わせてしまって本当に良かったのだろうか、と申し訳なく思う気持ちもあります。
でも、日本中の皆さんが毎朝、彼女のはつらつとした姿を見て、楽しく元気に笑顔で生活していく原動力をお届けできたんですから、岡江さんも喜んでくれていると信じています」 その明るいキャラクターで朝を彩った岡江さんの“代表作”は、いまも人々の心の中に残っている。
「文春オンライン」特集班 より抜粋