M109 (NGC3992)は、メシエ天体である。実際にどの天体を指すのか2つの説があり、いずれもおおぐま座に位置する銀河である。M109は、フランスの天文学者メシエによる 「メシエ・カタログ」の草稿の99番目にある天体のこと。この天体は、出版されたオリジナルの 「メシエ・カタログ」 には収録されていない。メシエは、「メシエ・カタログ」 における M97 の説明の中でこの天体について触れているが、「おおぐま座γ星の近くにある星雲」 としか記述していない。草稿では幾分詳しく、「おおぐま座γ星の近くにある星雲。赤経はγ星とほぼ同じで、〔赤緯はγ星の〕1度ほど南にある。メシャン氏が1781年3月12日に発見した。」とある。
1953年、アメリカの天体物理学者で天文学史家でもあるオーウェン・ギンガリッチは、メシエの草稿から古天文学的計算によってこの天体の1781.3年分点の位置を「赤経:11時43分、赤緯:+54.5度」 と算出した。ところがギンガリッチが示した位置には何もなく、数字の上では、赤経はNGC3953とよく一致しており、赤緯はNGC3992とよく一致していた。それにもかかわらずギンガリッチはこれをNGC3992と同定し、M109として「メシエ・カタログ」につけ加えた。これによって、以後現在に至るまでNGC3992がM109として公式に認められている。
しかしながら、ギンガリッチが算出した位置には、実際には何もなかったわけである。「メシエ・カタログ」 の草稿におけるメシエ自身の記述に従えば、メシャンが発見した天体は、γ星の南にあるNGC3953の方がむしろふさわしいといえる。