平成不況もあり、客足は遠のいていく。環境の激変が災いしたのは確かだが、竹野屋が傾いた原因は5代目の振る舞いにもあった。
趣味はジャズと無線で、インドア派のオタク気質。従業員とのコミュニケーションが苦手で、社内の人間関係がギクシャクすることに。
最後にはスタッフが5人にまで減り、旅館営業が不可能に。宴会や結婚披露宴は続けていたものの、宿泊ができないので、客はみんな近隣の温泉宿に流れてしまう。そんな厳しい実家の窮状を知って、心を痛めていたのが、まりやだった。
「テコ入れのために半年ほどリニューアル工事をしていたのですが、その改装費用のほとんどを、まりやさんが出したという話です。何よりも、実家の旅館が廃れていくのが耐えられなかったみたいですね。いても立ってもいられず、再建に乗り出したんでしょう」(同・地元の住民)
「5代目は2016年10月に退任し、きょうだいの長女の娘婿である男性が6代目となりました。2016年8月から部屋の改装を始め、2017年3月にリニューアルオープン。もちろん料理は仕出しではなく、旅館の厨房で作った懐石料理を出しています。
コンサルティング会社が入ってコンセプトから練り直し、東京都内のコーヒーショップ店長や一流旅館で働いた経験のある若いスタッフを多く採用しています。新社長は英語に加えてフランス語もできますから、インバウンド需要にも対応できますね」(前出・地元記者)
旅行サイトのクチコミによれば、竹野屋旅館では朝に竹内まりや、夜に山下達郎の曲が流れるのだという。2人のファンが泊まりに行くようになれば、全盛期の賑わいを取り戻せるかもしれない。