奈良時代には、製紙のことを「造紙」と称していたが、平安時代になると、『延喜式』で簀を「紙を漉く料」と注記しているように、「紙を漉く」と表現するようになり、『源氏物語』には、唐の紙よりも上質な紙が漉かれていたことが記されている。
流し漉きとは、紙漉きの際に、紙料(抄けるように処理された紙の原料)を濾水性の簀や網を動かして、紙料を簀に汲み込んだり紙料を簀から捨て戻したりして、簀や網の上に紙層を作る漉き方。日本、中国など東アジアで発達した漉き方で、日本の流し漉きと中国の流し漉きの方法は異なる。
日本の流し漉き技術を歴史的にみると、原料に独特の粘性物質を持つ日本雁皮原料の配合により紙料液に粘りが出て、ちょうど薄い抄紙用粘剤を使用して紙漉を行ったように溜抄きでの濾水性が向上することに始まったとされる。
抄紙用粘剤などを使用しない溜抄き法でも良い紙層を作る為に細かい揺すりを行っていることから、粘状物質を使った溜抄きの場合さらに簀を大きく揺することが可能となり紙質が向上し、さらには繊維が一定方向に揃う捨て水動作を伴う流し漉きに繋がったと推定されている。