弘前方式という剪定方法は、およそ半世紀をかけて弘前公園で築き上げられてきた。その模範となっているのが、弘前が全国に誇る「リンゴ栽培」の技術。リンゴ農家が毎年剪定を行うのを学び、弘前公園でも毎年冬に桜の剪定が行われるようになった。
芯止めは上へ伸びようとする一番の幹を切り止めてしまう方法だが、これはリンゴ栽培で一般的なもの。あまりに樹高が高くなってしまうと、収穫が難儀になる。これが弘前公園の桜にも応用されている。桜の木が高くて困るということはないが、芯止めをすることで上へ上へと伸びようとする力が横へ横へと広がりをもつ。それに加えて、樹冠内部へ日光もよく当たるようになる。
また枝を切ったところから病気が入らないように、切り口に「墨汁」を塗るのもリンゴ農家から授かった知恵だという。「桜切るバカ」というのは、桜が切り口から病気にかかりやすく、そこから腐ってしまうことも多いため。その病気の入り口となりかねない傷口に殺菌力のある墨汁を塗っておけば、その予防策となる。
腐った幹は白くボロボロと柔らかくなっている。そうした病巣に目を光らせ見逃さず、丁寧に削りとっていく。「手入れ」さえしっかりしていれば、多少幹が腐ってしまっても問題はない。一生細胞分裂をやめない植物は、その上へ上へと新しい生を積み重ねていくのだ。