「幻のペンフレンド・2001」制作にあたって
(NHK名古屋放送局 チーフ・プロデューサー 大加 章雅)
原作者の眉村卓先生は、かつての「少年ドラマシリーズ」を見て育った僕らの世代にとってはヒーローのような存在です。
先日、ご挨拶に伺ったのですが、先生は、「SFにとって必要な条件は何か」を熱く語ってくださったあと、ゴソゴソとポケットを探って、何やら取り出し、ちょっともったいつけるようにして見せてくださいました。それは、掌にすっぽり入る小さな小さな赤い豆手帳でした。「この中に、思いついたアイディアを書き込んでいるんだ。フフフ」と子供のように得意そうです。
私は、なにかすごい秘密兵器を見せてもらったような気がして、懐かしく幸せな気持ちになりました。子供のころ、アマガエルや七色に光るトカゲをポケットから出して見せ合ったり、牛乳びんのふたで秘密組織のバッジを作って「なかま」だけに配って、隠し持ったり、そんな時のワクワクした気持ちがよみがえってきたのでした。
そんな眉村先生がお書きになった名作「まぼろしのペンフレンド」を原作にドラマを作らせていただくことになりました。
この作品は、今から30年も前に発表されたものなのですが、今、読み返しても、勇気と冒険と不思議の世界に引き込まれ、ワクワクしています。そして、なにより、背丈は足りないかもしれないけど、人間のまっすぐな気持ちに追いつこうとする少年の一生懸命な姿を感じて、清々しくなるのです。
大人になってもなお、少女のようなお二人の脚本家、山永明子さんと藤長野火子さんに舞台を近未来に置き換えてドラマ化してもらいました。そして、キャストには、眩しいような笑顔の少年少女の俳優さんや、今なお純粋さと悪戯心にあふれているチャーミングな大人の俳優の皆さんにお集まりいただきました。
愛の詩シリーズでは、初めてのSFです。ワクワクドキドキ懐かしい世界を、親子一緒に楽しんでいただけることと思います。