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Channel: スチャラカでスーダラな日々
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なぞの転校生 #04

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なぞの転校生 #04

岩田広一の見た夢

チョウチョ広一「あすか! あすか! おい、あすか!あんまり遠くに行くな。」

あすか「お兄ちゃん、見て見て。こんなにいっぱいチョウチョとれた。」

広一「おう、凄いな。何だよ? 一匹もいないぞ。」

あすか「何言ってるの? お兄ちゃん。こんなにいっぱいいるじゃない。」

広一「あすか、おい、あすか。あんまり遠くにいくな。」

あすか「お兄ちゃん、チョウチョ蝶々が見えないの?」

広一「チョウチョなんて見えないよ。」

アスカ「チョウチョ、見えちゃダメよ。お兄ちゃんは、チョウチョ見えちゃダメ。」

広一「何だよ。今の夢。」


アゼガミ一方、江原邸ではD8世界とのやり取りが行われていた。

典夫「はい。こちらD-12。」

アゼガミ「モノリオ。準備は進んでいるのか?」

典夫「はい。着々と。」

アゼガミ「王妃の容体が危ない。予定を繰り上げたい。そちらの状況はどうだ? どうした?おい、モノリオ、聞こえているのか?」

典夫「それが…。」

姫「え? モノリオか? 元気か?」

典夫「姫…。」

姫「モノリオが学校に通ってると聞いたが。」

典夫「はい。」

姫「どんなところだ?」

典夫「姫。通信時間は限られています。学校の話は、この世界に来て頂いてから、ぜひゆっくりと。」

姫「わかった。楽しみにしている。」

アゼガミ「一刻の猶予も許されない。そちらはどうだ?」

典夫「まもなく準備が整います。ただ…この世界が想像以上に遅れていて、必要なものがなかなか揃いません。」

モノリス(通信切断まで20秒。)

アゼガミ「もう猶予はない。あと3日ですべての準備を整えろ。」

典夫「アゼガミ様、1つだけ…。どうにか、DRSのプログラムデータだけでも、どこかで手に入らないでしょうか?」

モノリス(残り10秒。)

アゼガミ「DRS? もうそんなものここにあるわけがないだろ。何を言ってるんだお前。…まさかないのか? そっちの世界にも。おい、それがないと…。」

モノリス(通信が途切れました。)

典夫はD8世界でモノリオと呼ばれているらしい。


その頃、広一の家では・・・

君子「帰りにお花、忘れないでね。何? 忘れてるの?」

広一「あっ、今日だった、今日だった!お母さんたちは?」

君子「お昼にね。お線香だけあげにいくわ。」

広一「もう9年か…あすかが死んで。」

君子「8年よ。」

広一「8年か。」

君子「もう! 適当ね!」


学校では、典夫が皆にこんな話をしていた・・・

典夫「この学校の生徒たちは、どういうヒエラルキーを構築しているんだ?」

春日「何それ? ヒ…ヒアルロン酸?」

典夫「ヒエラルキー。ピラミッド型の階級構造の事だ。」

広一「簡単に言えば…上下関係?」

みどり「生徒会みたいなこと?」

広一「まあ、そういう事? 何が聞きたいの?」

みどり「生徒会なんて、単に生徒会長と副会長と書記がいるだけ。あとはみんなただの生徒だけど。どうして?」

広一「ホームルーム委員も、選挙管理委員も、クラブ代表会議も、みんな一応、生徒会の組織の中の構成要員だけど。なんで?」

典夫「その中のボスは?」

広一「ボス? ボスは…生徒会長?ていうか、何が聞きたいの?」

典夫「生徒会長とはつまり、生徒の支配者なのかい? 特徴としては、背が高くて容姿端麗で、筋肉質でスポーツ万能。女性にもモテて、利己的でわがまま。競争心が強く弱者に対しては差別的…。なのかい?」

広一「なんかすげぇ偏った解釈だな。」

大森「ってか、何言ってるかよくわかんない。」

典夫「こういう支配者には必ず、パートナーとなる女子が存在する。それが副会長。フェロモンを放ち、生徒会長を肉体的精神的に独占する。さらにこの、副会長の下には直属の部下達がいて、彼らの手足となって働く。」

みどり「戸田先輩のこと?」

春日「えっ、でも戸田先輩ってセクシーってガラじゃなくない?」

典夫「さらにそのまわりには親衛隊達がいて、上には媚びへつらうが、弱者に対しては高圧的で、金を巻き上げたり、悪事をしたりする。その外側にいるのが弱者だ。マニアックな趣味に走り、その世界に埋没することで現実逃避をする。学校にはこうしたヒエラルキーが存在するようだが、君たちは、どれかな?」

広一「どれなの?って、そんなの選びたくないよ。」

みどり「どれでもないよ。」

春日「でも、ムー君は弱者じゃん。マニアックだし。」

広一「弱者言うな。」

典夫「ということは、ここの生徒達のヒエラルキーはまだ未成熟ということか。」

大森「お前が一番弱者系だけどな。話がマニアック過ぎて、何言ってるかよくわかんねえし。お前2ちゃんに入りびたり過ぎなんじゃね?」


放課後、春日愛と大森がファーストフード店でデート中に典夫が現れる。

典夫「トゲアリってアリを知っているか?」

春日「トゲアリ?」

大森「また変な話始まったよ。」

典夫「トゲアリは自分達で巣を作らない。トゲアリの女王は単独で行動し、オオクロアリの巣に入り込み、女王の部屋に侵入して噛み殺し、そのコロニーを我が物にするんだ。」

大森「またわけわかんねえよ。」

春日「っていうか、それって、サイゾーを倒して自分が学校のトップになるって話そのものじゃん。」

典夫「ちょっと違うな。ちょっと例えが悪かった。」

春日「それには協力できない。」

典夫「何も殺そうってわけじゃない。」

春日「当たり前!」

典夫「危険分子は制圧しておかないと。この学校に招きたい人がいるんだ。」

大森「招きたい人?」

春日「誰?」

典夫「あ…いや、こっちの話。とにかく、君達に迷惑はかけないから、よろしく頼むよ。」

典夫たちはファーストフード店を後にして、不良たちが集まる溜り場の様子を空いたドア越しに覗いていた。


一方、みどりと一緒に墓参り中の広一は・・・

広一「なんかあっという間だよ。最近アイツの夢をよく見る。夢の中のアイツは、昔のままの姿だったり、ちゃんと成長して中学生になった姿だったり。」

みどり「中学生になったあすかちゃん、きっと美人さんね。」

広一「兄貴の俺が言うのもなんだけどね。結構いけてる。なんで夢に出てくんのかなあ?やっぱりもっと長生きしたかったのかな?」

みどり「ムー君がもっと長生きしてほしかったって思ってるからじゃない?」

広一「そうかな? なんかねえ、実感ないんだよね。今でも生きてるような気がして。もういないんだけど。」


才蔵その頃・・・典夫は才蔵とコンタクトをとっていた。

典夫「君が才蔵か」

才蔵「お前は誰だ」

典夫「僕は転校生の山沢典夫です」

才蔵「俺がこわくないのか」

典夫「とくに恐ろしい感じはしませんね」

才蔵「ふ~ん」

才蔵は、ギャンブルで得た景品のチョコレートを典夫に贈る。

典夫「学校には行かないのですか?」

才蔵「行くさたまには。でもあんな偏差値の高い学校、俺には無理なんだよな・・・授業なんて何言ってるかまるでわからないし。でも親が見栄はって俺を無理矢理東西山高校に入れたのさ・・・俺の親、この町じゃなんでもできるから・・・」

典夫「その威光で、あなたは学校を支配しているのですね」

才蔵「支配・・・」

典夫「私はあなたをこらしめるつもりでした」

才蔵「俺をこらしめるって、どうやって・・・」

典夫「さあ・・・」

才蔵「俺なんか運動神経も鈍いし、ケンカも弱いし、そうか冴木のことか・・・」

典夫「冴木・・・」

才蔵「勝手に俺の手下のふりしていろいろやってるんだ。あいつ俺の舎弟をいじめ殺したくせに・・・」

典夫「舎弟・・・」

才蔵「松本っていって、いい奴だったんだ。でも冴木のやり方に反対したら、よってたかっていじめられて殺されちゃった。自殺ってことになってるけどな・・・」

典夫「・・・」

才蔵「なあ、こらしめるんだったら冴木にしろよ。なんなら俺も手伝うし・・・」

典夫「その必要はありません。あなたは喧嘩弱いんでしょう・・・」

才蔵「そうだよ。しかし、なんだって俺は初対面のお前に正直にすべて話しているんだろう」

典夫「あなたがいい人だからですよ」

才蔵「・・・」

典夫「で、冴木は何年何組ですか・・・」

才蔵「・・・いつも屋上にいるよ」

典夫「なるほど・・・」

去って行く典夫の後ろ姿に思わず手を振る才蔵だった。

次の日、教室に典夫の姿はない。

「どうしたんだろう・・・」と案ずるみどりに広一はまた妙な胸騒ぎを感じるのだった。


その時、典夫は屋上にいた。

冴木小次郎(碓井将大)とそれをとりまくいかにもヤンキーのような生徒たち。

冴木「なんだお前。」

典夫「君が冴木君か。僕は山沢典夫。転校生だ。」

冴木「だから何だよ?」

典夫「君がどんな奴か知りたくてね。授業も受けないのに、毎日わざわざ学校には来るんだな。どうして?」

冴木小次郎小次郎「何だとコラ!」

典夫「松本君の自殺についてどう思ってる?」

冴木「何だお前、松本の、ダチか。」

典夫「いや、会ったことはないが。ただ、君がどういう奴か知りたいだけさ。」

冴木「俺がどういう奴か知りたいのか。俺は…こういう奴だ!」

問答無用で冴木は典夫に飛び蹴りをくらわす。典夫は、そのまま屋上から地上へ落下した。

どよめく・・・とりまきたち・・・。

「いくらなんでもやりすぎだろう」とヤンキー風の女生徒である咲和子(樋井明日香)。

しかし冴木は、狂ったように笑いだすのだった。

冴木「あはは落ちちゃったよ。あははは死んじゃったよ。あはははは殺しちゃったよ。」

死んだように・・・横たわる典夫。

屋上にいた咲和子が屋上から心配して下りてきた。

咲和子「おい。」

典夫「あいつがどんな奴かわかったよ。さて、教室に戻るとするかな。」

咲和子「ちょっと待てよ。大丈夫かよ?」

典夫「何が?」

咲和子「何がって、体だよ。」

典夫「ああ、平気さ。地球程度の重力じゃ壊れないよ。それにこんな距離、たいしたことない。」

咲和子は、まるで化け物を見る目でなぞの男子生徒を見送る。

ちなみに咲和子役の樋井明日香は、23歳で高校一年生の不良役をしている。出演者の広一と典夫も23歳で高校二年生の役になっている。なんちゃって高校生だ。本物の高校生は、みどり役の桜井美南と姫役の杉咲花が16歳なので違和感がない。

第四話終わり

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