この世界にはショパンがいない…これがこのドラマの始まりとなる。これが何を意図しているのか、放送当時はまるで分からなかったのだが…
東西山高校2年3組に通う岩田広一と香川みどりは幼馴染。
帰り道が一緒の二人は、夕暮れの空に「上昇する流星」を目撃する。
みどり「あっ…流れ星!」
広一「何をお願いしたんだよ」
みどり「秘密・・・」
広一は「UFOじゃないか」と疑問を呈するのだが、みどりは「生まれて初めて流れ星を見て願い事したんだから流れ星に決まっている」と決めつけるのだった。
その現象は、ニュース(狩野恵里アナ)にも取り上げられるほど広範囲で目撃されたらしい。
もやもやとした気分で帰宅した広一は・・・隣室の住人・江原正三(ミッキーカーチス)が認知症を発症している場面に遭遇する。正三は妻にも愛犬・サスケにも先立たれた独居老人である。
江原「家にたくさん人がいるんだよ・・・」
老人の奇妙な言動に室内を検める広一。しかし誰もいないのだった。
広一「これか。レビー小体型の認知症って、ホントに幽霊を見るんだね。怖ぇ。」
広一の家では、広一の父親の亨(高野浩幸)はサイエンス・ライターである。広一は父親にも「UFO説」を否定される。そして母親の君子(濱田マリ)にも「いつまでたってもムーくんなんだから」と茶化されるのだった。恐らく広一は、オカルト雑誌「ムー(MU)」の愛読者なのだろう。このことはクラスでも周知の事実である。
亨「いやいや、隕石が上方向に飛ぶってのは必ずしもあり得ないことじゃないよ。例えば、隕石の軌道が浅く、一度は地球の重力に引き寄せられつつも、落下せず、また地球から離れていったとするならば、隕石は上方向に飛んでったように見えるだろう。」
広一「いいや、あれはきっとUFOだね。」
亨「UFOなんか存在しないよ。仮に宇宙人がいたとしても、この地球にやってくるのに何万光年もかかる。」
広一「超ひも理論は? あれは、宇宙に無数の裂け目があるって話だよ。その裂け目から裂け目へUFOが時空を超えてたら?」
亨「ハハッ。SFだな。時空間を超えられたとしたって、そこにはおそらく莫大な重力場がある。地球を粉々にするほどのな。そこを旅行するなんて不可能だよ。なぁ、広一。お前さ、父さんがサイエンスライターなのに、UFOとか幽霊とか、発想が『ムー』なんだよ。」
広一「『ムー』って言うな。」
君子「出たわね、『ムー』。」
亨「お前ホント好きだよな。トンデモ系雑誌。」
「なぞの転校生」といえば大谷先生である。今回の設定は音楽教師であり、グスターヴ・ホルストの組曲『惑星』から「金星、平和をもたらす者」を生徒たちに聞かせる。
極めて控えめなサービスとして、香川みどりたちの体操着から制服への生着替えがあり、それを跳び箱の中から盗撮した大森健次郎(宮里駿)は香川に発見され、口封じの代わりに奴隷となるのだった。
しかし、体育倉庫で「上昇する流星」に続く怪奇現象「奇妙な発光」が発生する。
みどりは、奇妙な出来事の連続に何かの兆しを感じた。
その夜、広一とみどりは春日愛と変態大森とともに校舎に侵入する。
広一はデート気分で浮かれるのだった。夜の校舎に好きな女の子と二人きり。夢のようなシチュエーションである。
四人を発見、追跡した警備員はプラズマ状の謎の電光に襲撃されるのだった。世界に何かが起ろうとしていた。
そして江原正三の部屋には、全身を白い泥土に覆われた奇妙な少年(本郷奏多)が出現していた。
…正直、第一話の見どころは全身を白い泥土に覆われた奇妙な少年(本郷奏多)が出現した場面くらい。後半では話の流れが詰まっただけに、第一話は省略しても良さそうな感じだった。ただ最終話を見ると、第一話で見られた逆向きの流れ星が妙に説得力のある構図となっている。
1975年にNHKで放送されていた「なぞの転校生」は原作に忠実なシナリオで大阪から引っ越してきた設定が武蔵野から引っ越した設定になっていたが、TV東京版の「なぞの転校生」はシナリオが全く違っていて登場人物も多い。違う設定のシナリオだが、現代風に昇華した見せ場が多く近年では素晴らしく出来のいいSFドラマとなった。NHK版より3話も多いためか、長い挿入歌が入ったりして多少間延びした場面も多い。
第一話終わり