1949年フランス・パリ出身のフィリップ・スタルクは、インテリアデザイナーとして、数限りない名声をその手にしてきました。彼はパリの装飾美術学校を卒業後、企業の家具デザイン担当を経て、30歳のときにアメリカでスタルク・プロダクト社を設立。建築・インテリア・家具・食器・出版物など、多様な分野に渡るデザインを手掛けることから、”総合デザイナー”とも呼ばれ、彼が生み出すプロダクトは多くの人々から愛されています。
フィリップ・スタルクのデザイン哲学が、彼の作品にどのように反映されているのでしょうか。ここからは、フィリップ・スタルクが手掛ける代表的な作品を見ていきましょう。
フィリップ・スタルクの代名詞と言われているのが、この”Juicy Salif”というレモン搾り器。
彼がこの意匠のインスピレーションを得たのは、家族との食事中のこと。イカ料理にレモンを絞っている様子を見た彼は、まさにイカのような形状をしたレモン搾り器の着想を得たのです。
上部にレモンなどを当てて搾ると、搾り汁は縦に何本も入れられた溝を伝い、三つ足の下に置いたグラスにどんどん滴っていきます。シンプルで美しいフォルムは芸術的にも高く評価され、ニューヨーク近代美術館(MoMA)では永久コレクションにも認定されている、まさに傑作です。
デザインのみならず、この”Juicy Salif”は、レモンの搾り汁を入れたい容器に直接入れることができるので、機能性にも優れていると言うことができます。
1990年に誕生したこの商品は、昨年2015年に発売から25周年を迎え、同年4月に開催されたミラノ・サローネ国際家具見本市で特別展示が行われました。タイトルは、そのデザインの美しさゆえにレモンを絞れない、という意味を込めて、「Twenty-Five Years Without Squeezing a Lemon(レモンを絞ることなく25年)」と題されました。