(11)部分日食開始
機材置き場に戻ったら第一接触が始まります。相方は太陽が半分欠けたら戻るとのこと。私は撮影に専念します。ガラケーに保存したDATAを見比べながら撮影を進めます。
撮影と言っても今回はビデオカメラだけで撮影するので、部分日食の動画は1~2分ほど撮って動画の撮影中に静止画を撮影します。もう一つのビデオカメラは、本影錐の様子を取るためだけに設置しました。太陽が欠けていくにつれて気温が徐々に下がります。
太陽が半分まで欠けてきたところでやって来た相方にジェシー宅にある穴あきのお玉を持ってきてもらうように言いました。相方は快諾してお玉を持って来ました。お玉を地面にかざすとピンホール効果で欠けていく太陽が映ります。
ギャラリーの誰一人として気が付いた方はおらず、私達の独壇場でした。その頃には姉夫婦も来られていて、お玉をかざすなど色々とお手伝いをしていただきました。
日本から持って来たビクセンの日食グラスをギャラリーに見せたところハッキリ太陽が見えるので、大変好評でした。ジェシーさんの奥さんが張り切ってしまって、次々とギャラリーに見せていました。キリのいいところで公園のトイレに行きます。泣いていた子供もいましたが、世紀の皆既日食が見られるのに状況を理解できないのは可愛そうでした。
トイレで用を済ませて機材置き場に戻ります。太陽は更に鋭さを増して部分日食の端が鋭角になってきます。隣で観察されている村田さんが鋭角から皆既日食になるにはどう変化するの?とのご質問をいただいたので、そのまま月は太陽を覆い隠して最後には一点の光になります。そこからダイヤモンドリングの始まりです…と伝えました。
また村田さんから質問です。例えば僕はサクラメント近郊のデイビスから来たんだけれど、そこで部分日食が進むと太陽はどう変わるの?とのこと。これも月は太陽の全てを隠さずに角度を変えて欠け戻ります…と伝えました。
初めて皆既日食を経験される方は好奇心の固まりです。それなりにお答えできる知識を積んで来たのでどんな質問にもお答えできます。ただ太陽が糸のように細くなってきたので冷静さを保ちつつも心臓の鼓動は早くなります。
撮影スケジュールに従って事前に慌てないようにゆっくりフィルターを外します。拡大レンズをつけ直して撮影再開。ピントが合わなかった太陽にピントが合うと、一点の眩しさの反対側にコロナのリングが見えてきます。一点の光は小さくなり、ダイヤモンドリングがセイラムの空に輝きました。
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