実年とは、1985年11月25日に当時の厚生省が公募に基づいて決定した50歳代・60歳代の年齢層を指す言葉。官庁用語などでは使われるものの、一般には普及しなかった。
1980年代、高齢化の進展によって世界有数の長寿国となった日本。老年あるいは高齢者として見られてきた50歳代・60歳代を高齢者扱いする事に対する疑問の声が上がるようになり、定年の延長や高齢者の雇用促進によってこれらの世代を有効活用すべきであるとする声が高まってきた。そこで厚生省は、壮年とも老年とも言いがたいこれらの世代を表す用語を一般から募集する事になった。
公募の意見で最も多かったのは人生の成熟を意味する「熟年」であった(1万2145通)。これはこの世代を指す言葉としては1980年前後から用いられていた言葉ではあったが、「広告代理店業者による造語」「熟したあとは腐って落ちるイメージがある」という2つの理由で選考委員に支持されなかった。このため次点(6055通)の「実年」が「人生で一番充実する時代というイメージや実りのときという意味があって50、60歳代にふさわしい。左右対称の字に落ち着きがある」「字の意味がふさわしく、読み書きが容易で、語感がよく、少、青、壮、老と並べて使うのに適当」といった選考委員の支持を得て、金賞に選ばれて採用された。
まさに当時その実年世代であったハナ肇とクレイジーキャッツの曲に、この言葉が作られたことを記念しているともおちょくっているとも取れる様な作品「実年行進曲」(作詞:青島幸男 作曲:大瀧詠一。1986年4月23日発売)がある。