うま味は、主にアミノ酸であるグルタミン酸や、核酸構成物質のヌクレオチドであるイノシン酸、グアニル酸、キサンチル酸など、その他の有機酸であるコハク酸やその塩類などによって生じる味の名前。
うま味は、特に日本料理・中華料理といった東アジアの料理や、ベトナム料理・タイ料理といった東南アジアの料理においてきわめて重要な味である。中華料理では、うま味の事を「鮮味」(シエンウェイ、xiānwèi)と呼称している。これらの文化圏ではうま味を凝縮した魚醤・穀醤を基礎的な調味料として盛んに使い、魚介類の煮汁を出汁として用いて更にうま味を加えていた。そのため、日本の学者は「ダシがきいていない」という味覚は塩味や酸味が足りないのとは違う感覚であることを経験的に知っており、うま味の存在に早くから気づいていた。
うま味物質は東京帝国大学(現在の東京大学)教授だった池田菊苗によって、1908年にだし昆布の中から発見された。最初に発見されたうま味物質はグルタミン酸であった。
1913年、小玉新太郎が鰹節から抽出したイノシン酸もうま味成分であることを確認した。さらにこののち、シイタケ中からグアニル酸が抽出され新たなうま味成分であることが発見された。
一方西洋文化圏においては、フランス料理におけるフォン・ブイヨン・コンソメのように出汁によってうま味を増す料理法も一部存在したものの、多くの料理においてはトマト(トマトはグルタミン酸を豊富に含む)、チーズのような酸味などが強い食材によってうま味を補給したり、何より肉料理においては肉の煮汁自体がうま味の供給源となったため、うま味を増すことに多くの意識は向けられなかった。そのため、日本の学者の主張するうま味の存在は、欧米の学者からは一笑に付され、うま味なるものは塩味・甘味などがほどよく調和した味覚に過ぎないと考えられた。
しかし2000年、舌の味蕾にある感覚細胞にグルタミン酸受容体(mGluR4)が発見されたことで、俄然うま味の実在が認知されるに至った。