オゾン(ozone)は、3つの酸素原子からなる酸素の同素体である。分子式はO3で、折れ線型の構造を持つ。腐食性が高く、生臭く特徴的な刺激臭を持つ有毒な気体である。大気中にもごく低い濃度で存在している。
常温常圧では薄青色の気体である。沸点-111.9 ℃ (161.25 K) で紺色の液体となり、凝固点-197.2 ℃ (75.95 K) で濃紫色の固体となる。中心の酸素原子と両端の酸素原子の結合は2本とも等価であり、オゾン分子は O=O+-O- と O--O+=O の2つの極限構造からなる共鳴混成体であると考えられる。オゾンはフッ素に次ぐ強い酸化力を持つため、高濃度では猛毒である。吸い込むと内臓が酸化され糜爛(びらん)状になる。
オゾンはフッ素に次ぐ強力な酸化作用があり、殺菌・ウイルスの不活化・脱臭・脱色・有機物の除去などに用いられる。日本とアメリカ合衆国では、食品添加物として認可されている。
水道水の殺菌に塩素の代わりにオゾンが用いられる国も多い。オゾンは有機塩素化合物を生成しないため、処理後の水にも残留せず、塩素と比較して味や匂いの変化が少ない。従って、いくつかのシステムでは配管での細菌増殖を防ぐために少量のオゾンを添加することがある。日本では近年、東京都水道局や大阪市水道局で水道水の殺菌の一環として用いられており、追随する自治体も増えてきている。
気体としてのオゾンは、その毒性により高度な濃度管理が求められるため、オゾンガスをミキシング又はバブリングと呼ばれる手法で水に溶け込ませたり、電気分解により水に含まれる酸素を利用して作る「オゾン水」として活用される例が増えている。オゾンの不安定な性質により数十分で酸素と水に戻るので残留性のない殺菌水として使えるほか、塩素系殺菌剤やエタノール系殺菌剤が使えない場合にも使用される。
ヨーロッパでは医療への活用が多数試され、その効果が発表されている。近年は日本でも医療、介護、食品、酪農を主とする農業などの分野で殺菌・消臭・廃棄物処理目的で使われることが多くなった。