極循環とは、緯度60度付近で上昇した空気が対流圏上層を極付近まで移動し、極付近で地表付近に下降し、緯度60度付近まで戻る大気の循環のこと。
北極や南極付近は太陽高度が低く、太陽エネルギー(熱)の供給が地球上で最も少ない。そのため、極付近では冷やされた空気が下降して地表付近に集まり、極高圧帯となる。すると、上空では気圧が下がる。より緯度の低い地域から熱が運ばれてくるために、緯度60度付近で上昇した空気が上空6~10km付近の対流圏や成層圏を北上して、気圧の低い極付近の上空に集まってくる。この低気圧を極渦という。南極は大陸が広がっており、周囲は海で大気の流れを遮る山脈が少ないため、極渦が安定している。一方、北極は周囲に大気の流れを遮る山脈が多いことによりロスビー波が発生して渦を崩してしまうため、極渦は安定していない。
地上では、極高圧帯から高緯度低圧帯に向かって風が吹く。これは自転の影響で東寄りの極東風となる。吹き出した寒気は暖気と衝突して寒帯前線をつくる。極高圧帯は非常に気温が低いため、寒帯前線をつくる暖気と寒気の温度差が非常に大きく、低気圧が発達しやすい。
極渦が安定している南極上空では、最も寒い冬季には気温が約-90C°まで低下する。そのため、硫酸や硝酸などからなる極成層雲(極成層圏雲)が発生する。この硫酸などが塩素と反応し、オゾンが分解されてオゾンホールができる。日射量が増える9月~10月ごろは最もオゾン層の破壊が進む時期である。北極上空の気温は極成層雲が発生できる温度まで低下しないので、オゾンホールはできない。