ブナ(橅)の木は従来、椎茸栽培以外にはあまり役に立たない木であったために伐採を免れた。ブナはたくさんの小さな実を付けるために、果樹と同様に寿命が短く、寿命は200年ほど。自然に放置して倒れたブナは他の樹木や生物の生存に欠かせない栄養分を供給する。白神山地のブナの原生林は樹齢の若いもの、大木、老木、倒壊し朽ちたものまであらゆる世代が見られる。ブナだけでなく、カツラ、ハリギリ、アサダなどの大木も見られる。
白神山地は、名勝地のような美しい高山植物や雄大な景色を眺められる場所は少ない。眺望がよい場所や高山植物が咲いている場所に行くためには、それなりに苦労をしなければならない。世界遺産の登録は、観光地であるからではなく、このような人為の影響をほとんど受けていない原生的地区が広大に広がっている場所が世界的に珍しいためである。
白神山地の中で特に眺望がよい場所は、白神山地に詳しい登山家の根深誠は、順番に天狗岳、小岳、二ツ森、白神岳をあげている。
白神山地は現在でも少しずつ隆起している地形で地盤が弱く、崖崩れが多発している。そのため、林道をつくっても崖崩れのために不通になってしまう場所が多い。また、冬期間は半年も雪に覆われる。そのため、大規模な林道建設を行うことが難しく、結果的に原生林が残されることになった。