落ちないはずの石が、熊本地震の影響で落ちた。熊本県南阿蘇村の観光スポット「免(めん)の石」。阿蘇の南外輪山の割れ目に引っ掛かって浮いたように見える奇岩で、最近は「落ちそうで落ちない」と受験生らの間で人気が高まっていた。新たな観光資源として売り出し中だっただけに、地元には落胆が広がっている。
村観光協会によると、免の石は縦3m、横2mほどで、重さは5トンを超えるとされる。「天を舞う竜が産み落とした卵」と伝わり、地元では神聖なものとされてきた。「災いを免じる」という意味からその名が付いたとみられる。
2014年に石を望む高台に展望公園が設置され、昨年は合格祈願の人など約千人が来訪。石の近くまで歩くトレッキングツアーも人気が高まっていた。
4月16日の本震後、石がなくなっていることに近くの住民が気付いた。村観光協会は「せっかく人気が高まってきたのに残念」。それでも観光ガイドの古澤順正さん(65)は「“落ち”が付いたので落語家の聖地になるかも。落ちた石に触れるツアーなど、新たな観光ルートを考えたい」と再起を誓っていた。
=2016/05/02付 西日本新聞朝刊より抜粋=