日本の伝統楽器は、雅楽から近世邦楽に至るまで、中国から場合によっては朝鮮を経由して伝わった楽器が、改良されてきたものと言ってよい。但し日本人の音感は、中国人の伝統的な音感とは微妙に異なっている。中国の場合には、洋楽風に言えば1オクターブ内にド・レ・ミ・ソ・ラの5音を使い、中心的な音(終止音)はソである場合が最も多い。
日本の伝統音楽の場合は、日本海側には「ラ」を中心とする音組織(音階)の使用例が多い。この音階は、モンゴルやチベット、雲南省の諸民族で特によく見られる。漢族音楽では比較的少ない。
日本でも、太平洋側の伝統音楽は「ソ」を中心とする音楽が多かったが、江戸時代に「ラ」や「ミ」を半音下げる音階が急速に広まった(都節=みやこぶし)。いわゆる近世邦楽の楽曲はほとんどがこの音階だ。しかし漢族音楽にはほとんど存在しない。