メッセンジャーは、アメリカ航空宇宙局 (NASA) のディスカバリー計画の一環として行われている水星探査ミッション、及び探査機の名前である。2004年8月3日に打ち上げられ、2011年3月18日に水星の周回軌道に投入されて観測が行われ、2015年5月1日に水星表面に落下してミッションを終了した。
メッセンジャー以前に水星に接近した探査機には1974年から1975年のマリナー10号があるが、表面の僅か45%しか撮影されておらず、水星は太陽系で最も探査が遅れている惑星の一つだった。水星の探査が困難な理由に、太陽から受ける膨大な熱、電磁波による通信障害、水星の公転速度が大きいことなどがあったとされる。
2000年代に入って太陽系形成の理解を深めるため、ようやく水星へと興味が注がれてきた。そして、次々に探査機を水星へ送る計画が立てられた。その1つがメッセンジャーである。
マリナー10号の調査では、水星の物理的な性質以外ほとんど分からなかったため、メッセンジャーでは水星を構成する物質、磁場、地形、大気の成分などが調査される。探査機は燃料節約のため地球、金星、水星と複数回の減速スイングバイを行いながら水星の周回軌道に接近する。その結果、地球から水星まで最短距離では約1億kmのところを、79億kmもの軌道を辿ることになる。
2014年7月25日に、初めて高度を100kmにまで下げた。8月19日には高度50kmへ、9月12日には高度25kmまで降りる予定で、25kmまで高度を下げた後は94kmまで高度を上げる予定。その後も何度か近水点高度を上げることにより、水星表面へ落下するのを2015年3月以降まで延ばす。
2015年5月1日に水星表面へ落下し、ミッションを終了した。3月から計7回のスラスタ噴射を実施して高度を上げることで落下を1ヶ月以上遅らせた。なお落下直前まで観測は行われた。