弘前城石垣大改修に伴う天守の曳屋(ひきや)工事は24日、一時的な移設先となる仮天守台へ天守を設置する最後の作業が行われた。市民や観光客が見守る中、ジャッキダウンした天守が仮天守台に着座。1915(大正4)年以来、100年ぶりとなる曳屋工事は実質的に終了した。
弘前市は、来年3月にかけ天守の耐震補強を実施、4月からは、移設先で天守を一般公開する。また、来年度からは、崩落の危険性が指摘されている石垣を解体し、修復する作業に着手。天守が元の位置に戻るのは早くて6年後、事業全体が終了するのは10年後の予定だ。
曳屋工事は8月16日の「地(じ)切(ぎり)式」で本格的に開始。水平移動は9月3日から10月17日まで行われ、元の天守台から、北西方向の仮天守台へ、天守が77.62メートル動いた。21日からは天守を計75センチ下げるジャッキダウンが始まり、23日時点で70センチ天守を下げていた。24日、残された5センチのジャッキダウンは「着座式」と称したセレモニーとして行った。
工事全体を統括する西村組(弘前市)と、曳屋を担当する我妻組(山形県米沢市)の作業員が配置につき、葛西憲之弘前市長の「天守台に据えや-っ」の号令の下、高さ約14.4メートル、重さ約400トンの天守は油圧ジャッキで「ガタ、ガタ…」と音を立てて下降。「到達した」とのアナウンスが流れると、会場からは拍手が起こり、関係者、観衆が一体となって風船を空に飛ばす「バルーンリリース」で完了を祝った。
曳屋開始以降、定期的に現場に通っていた、弘前市の三浦和子さん(63)は「城もそうだが、職人さんたちの姿に感動した。本当にご苦労さまと言いたい」と声を詰まらせた。葛西憲之市長は「天下の大事業として、関心を集め続けてきた曳屋工事が一定程度の成果を歩んできたのも、職人さんたち、工事に携わった皆さんのおかげ」とねぎらった。