「ストップ、ストップ」「何があったのか」-。5日夜、弘前ねぷたまつりで運行団体に所属する男性1人が死亡した事故は、大勢のねぷた関係者の目の前で発生した。事故のあった藤代ねぷた愛好会のねぷた付近では関係者がぼうぜんと立ち尽くし、悲鳴が遠くから聞こえるねぷたばやしをかき消した。
土砂降りの雨の中、消防車や救急車が弘前郵便局前の現場に駆け付け、辺りは騒然となった。ねぷたの周囲には大勢の人が集まり、心配そうに見つめていた。
現場付近にいた女性は「ねぷたが北大通り側から中央通りに向け出発する際、(ねぷたを)上げ下げしていたのは見えた。何があったか分からないが、急に『ストップ、ストップ』となった」と話した。
藤代ねぷたに家族が参加していたという女性は「声援を送っていたら急に『藤代、バック』という声が聞こえた。ねぷたを郵便局そばに移動させた時には消防車が来ていた」とショックを隠せない様子だった。
別の団体関係者らは「こんな事故、初めてじゃないか」「直後に来るはずだった、藤代のねぷたが来ないので、何が起きたのかと思った」と驚いていた。通りかかったタクシー運転手は「信じられない」と絶句していた。
同市藤代にある愛好会の制作小屋には午後11時すぎ、会員ら15人ほどが集まっていた。取材に対し「引き取ってもらいたい」「会長が戻っていないので、何も話せない」と言葉少なで、沈み込んだ様子だった。
弘前ねぷたまつりは、武者の絵などが描かれた扇形の灯籠(とうろう)を乗せた山車が市内を練り歩くまつり。国重要無形民俗文化財で、例年百数十万人の観光客が訪れる。弘前市の葛西憲之市長は記者会見し、「弘前を代表する祭りで、市民1人の命が失われたことを重く受け止めて中止を決めた」と語った。青森県弘前市の弘前ねぷたまつりで男性がねぷたに挟まれて死亡したことを受け、市などはまつりの中止を決めた。
この事故は5日午後8時半ごろ、弘前市北瓦ヶ町の弘前ねぷたまつりの運行ルートで、運行の準備をしていた男性が大型ねぷたに挟まれて死亡したもの。事故を受けて、まつりを主催する弘前市など4団体が協議した結果、6日と7日の弘前ねぷたまつりの中止を決めた。弘前ねぷたまつりの死亡事故は、1958年の合同運行開始以来初めて。