「カチューシャ」(露: Катюша)はソビエト連邦の時代に流行したロシアの歌曲である。作詞はミハイル・イサコフスキー、作曲はマトヴェイ・ブランテルである。日本でもロシア民謡を代表する一曲として広く親しまれている。この楽曲は、カチューシャという娘が川の岸辺で恋人を思って歌う姿を描いた。カチューシャとは、エカテリーナ(Екатерина)の愛称形である。
この歌の制作は、イサコフスキーとブランテルが1938年に出版社の仲介で引き合わされたことに端を発する。2人は依頼された新刊雑誌のための歌曲を完成させると、帰りの車中で早くも次の作品への構想を立てた。ブランテルが自らの率いる国立ジャズ・オーケストラのための曲作りを持ちかけると、イサコフスキーはその場で自作の詩を暗誦した。ブランテルは歌詞を書きとめながら、その時すでにリズムと旋律が頭の中に浮かんでいたという。
当初の歌詞は2番までしかなく、カチューシャの恋人が兵士として徴用されていることを示唆する内容はなかった。しかし当時の不穏な世界情勢を反映して、国境警備に当たる若い兵士を故郷の恋人が思って歌うという設定で3番と4番の歌詞が書き足された。こうして完成した「カチューシャ」は、1938年11月27日にワレンチナ・バチシェワ(Валентина Батищева)によってヴィクトル・クヌシェヴィツキー(Виктор Кнушевицкий)の率いるジャズ・オーケストラとの共演で初演された。この初演は好評を博し、アンコールに応じて3度も演奏された。