公益社団法人青森青年会議所・ねぶた師 立田 龍宝
東方征伐から帰る途中、伊吹山へ行き、神を素手で討ち取ろうと出立するが、そこに白い大猪が現れる。命はこれを神の使いと思い無視したが、実は神自身の化身で命は失神してしまった。山を降りた命は、居醒めの清水で正気をやや取り戻すが、すでに病の身となり、弱った体で倭を目指して進んだ。
そして能煩野に到った命の足は歩みを止め、心は故郷である倭へ飛んでいた。場面は、命が倭を思い「美しき倭」「倭は美しい」「そんな倭に帰りたい」と、倭を見つめながら「天翔る心」を持ち続けた命の美しく逞しい容姿を表現した。「倭は国のまほろば たたなづく 青垣やまこもれび 倭し美わし」この国偲びの歌を詠って亡くなるのである。
そして真っ白な鳥と化した命は、伊勢を出て、河内の国志幾に留まり、そこに陸を造り、やがてまたその地より天に翔り、青い垣根のように囲まれた山々を覗きながら、透きとおった高く広い大空を飛び、故郷のまほろばを、美しき倭を指して飛んだ。
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