市川崑監督らしい演出。地面すれすれのローアングルは大原麗子さんを遠くに映し、雨模様の中、急いで家路に着く様子をオープニングのショットで見る側に認識させている。
オープニングの屋外にいる足のアップで始まり、家路を急ぎ慌てて家の中に入る美しい大原麗子さんを映す。屋内の画面に変わるると、ここでも階段を駆け上がる足のアップになる。急ぐ様子を表情や全身でなく、足という体の部分だけで表現できるのは市川崑監督だけであろう。
この場面は短い画を細かくつなぎ足だけで急ぐ様子を表現していて、その短いショットをつなぐ技術がプロだと思う。この独特のシーンは、市川崑監督がアニメーション出身者である事が影響している。
ウィスキーの瓶と大原麗子さんの表情を交互に描き、雷雨の映像も挟み、期待が外れて家で待っている筈の恋人(旦那?)がいない事が分かる。次に映像に出ない開扉と恋人の声などの音声だけと大原麗子さんのアップで待ちわびていた女性の気持ちをグッと画に滲ませて見る側にも引き込む。こういう演出のCMは最近見る事は中々ない。