りんご畑が広がる津軽地方からやって来た「りんごっ子」が、全国にその名を知らしめた。2013年(平25)夏、弘前学院聖愛(青森)が初出場して2勝を挙げた。右横手投げのエース小野憲生(東北福祉大→TDK)は玉野光南(岡山)との1回戦で完封勝利するなど、甲子園で活躍した。有名になった「りんごっ子」の愛称。小野をはじめ、選手たちは伝え聞くまでまったく知らなかった。
小野 僕らは「りんごっ子」なんて、誰も言っていない(笑い)。新聞とか見て知っただけなんです。知らない間に「りんごっ子」になっていた。今でも故郷に戻ってみんなで集まると「誰が言ったんだ」と話題になるんです。
7年前の夏、初めて青森大会を優勝した後のインタビュー。原田一範監督(37)が初めて「りんごっ子」という言葉を口にしたのが始まりだという。全員が津軽生まれで、実家でりんご農家を営む選手がいることもあり、チームにつけた愛称だった。
小野 自分の顔は赤いんです。それで新聞に「エースの顔も真っ赤」なんて書かれちゃったりして(笑い)。恥ずかしかったなあ。
甲子園では恥じらうどころか、選手全員がりんごのように真っ赤に燃えた。玉野光南との1回戦で初出場勝利。青森県勢が初陣を飾ったのは、あの太田幸司を擁した三沢以来45年ぶり2校目だった。2回戦では沖縄尚学も破った。ベスト8入りこそ逃したが、初陣2勝は県史上初めて。大きな足跡を残した。
小野 甲子園で楽しくやろう。勝ち負けじゃなくて、今ここにいることを幸せに感じながら。その気持ちがみんなにあったんです。1勝、2勝が青森で記録的なことなのは甲子園が終わって、帰ってから知りました。びっくりです。みんなそうでした。