『僕の中の少年』は、1988年10月19日に発売された山下達郎通算9作目のスタジオ・アルバム。
アルバム・タイトルとなった“僕の中の少年”は、ちょうど長女が誕生した頃に作られた曲で、「レコーディング前からタイトルが決まっていたなんていうのは、このアルバムと『POCKET MUSIC』くらいだものね」と、アルバム制作の構想段階で既にこのテーマとタイトルでいくことを決めていたという。
自身にとって子供の誕生はプライベートな要素として非常に大きく、そうした意味からも“シンガー・ソングライターによるコンセプト・アルバム的な作品”だとし、「僕がこうしたコンセプト・アルバム的なものを作る時、常に想起しているのは、リチャード・ハリスの『A Tramp Shining』やムーディー・ブルースの『Days Of Future Passed』なんだ。
僕はああいうアルバムに首まで浸かって育ってきたから、コンセプト・アルバムというものに憧れを抱いている。でも、日本ではあまり受けないんだよね」と語っている。本人の制作意図とは裏腹に、当時のスタッフは“夏だ、海だ、タツローだ”路線の継続を目論んでおり、思惑が一致していなかったという。
30代半ばを迎えようとしている時期にあって、スタッフが強く推し進めた先行シングル「踊ろよ、フィッシュ」の不振、そしてスタッフから「そろそろ落ち目なのだからリスキーだ」とされた「ゲット・バック・イン・ラブ」のヒット。そして、自分の中の大人と子供。そうした様々なせめぎ合いがこのアルバムには反映されているという。