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Channel: スチャラカでスーダラな日々
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豪華客船皆既日食・観測編

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(6)3年ぶりの皆既日食

ついに皆既日食当日を迎えました。目標地点とする北硫黄島北方沖の海上で観測するものと思ったのですが、より長時間の皆既日食が見たい方々の意向に備えて硫黄島東方沖60kmの海上で観測となりました。観測地のGPSが3分ほど遅くなってしまいます。朝食後、観測前に観測場所を募り部屋の全員が8階トップデッキを希望して了承されました。最終的に150人の観測が可能だったそうです。
北硫黄島を横切る
普段一般人が入ることの出来ない場所なので、他の観測者との区別のためVISITORと言うピンク色のシールが名札に貼られました。トップデッキを映した場所は二段ほど高くなっていて、換気のための排気口が設けられていました。その排気口からは冷気が絶えず吹いているので、暑がりの私は迷うことなく排気口の横に陣取りました。その排気口の上が長方形の形をしていてシャドーバンドを撮影するには最も適当な場所なので、お借りしたビデオカメラをシャドーバンドを撮影するだけのために設置しました。
ふじ丸8階トップデッキ
8階トップデッキの日陰の気温は29℃だったのですが、直射日光の紫外線や赤外線がキツく事前に日焼け止めを塗っても肌が焼けてきます。ふじ丸の周囲には、いろんな豪華客船が集結しました。飛鳥Ⅱ、コスタ・クラシカ、遠くにぱしふぃっくびいなすが見えています。そのときは船の影すら見えなかったおがさわら丸とははじま丸は、北硫黄島18km北方の海上で観測されたそうです。食分も95%を超えた時点で、やっと気温が27℃と下がり始めました。強拡大すると船の揺れが尋常ではないので、色々と撮影画角を確かめます。
コスタ・クラシカ
皆既1分前にビデオカメラの減光フィルターを外します。よりピントが合いやすくするためですが、ビデオカメラで撮ってもかなり揺れるので冷静に考えると銀塩では写真にならないのが目に見えていました。悲しいかな…銀塩FILMだけあって、現像しないと結果が分かりません。きっと失敗作の連続写真に違いありません。それでも目の前に起こる現象を捉えようと、撮影を続けました。第二接触は、今世紀最大級の継続時間だけあって月と太陽の接触点が少なく、あまり迫力の感じられないダイヤモンドリングの閃光が見られました。
第二接触のダイヤモンドリング
その時シャドーバンド専用のビデオカメラには、白い排気口の上に細波のようなシャドーバンドが映っていました。デッキの床が薄茶色だったので、誰もシャドーバンドには気が付いていない様子です。別撮りしたビデオカメラには、僅かに映っていました。銀塩での撮影を中断してビデオカメラの向きを変えると同時に、露出を変えます。すると、典型的な極小期型のコロナが見えました。1994.11.3にチリで見た皆既日食のコロナに若干似ているようです。昨年三塘湖の悲劇でロクにコロナを見られなかったので、船上の歓喜と言う題を付けたのが今回のコロナです。
船上の歓喜
皆既時間が長かったのに銀塩のFILM交換に追われ、かなり焦りました。カメラのFILM残数表示が昇順だと勘違いして、撮影途中でFILMが終了したので巻き戻ってしまいました。この時点で銀塩の撮影はあきらめるべきなのに、いつもの習性で交換をしました。約1分間のロスです。その間肉眼で周囲の空を見たり、コロナの周りに惑星を確認したりしました。有翼日輪型のコロナは、磁気中性面が延々と伸びて太陽の南北には磁力線がハッキリと見えています。手元にもう一台カメラがあれば、皆既中の海上を360度撮影出来たのですが…
第三接触のダイヤモンドリング
そうこうしているうちに、もう第三接触のダイヤモンドリングを告げるアナウンスがありました。例え皆既継続時間が10分あっても一時間あっても全く足りないくらい時間の短さを感じました。ふじ丸を覆っていた本影錐はあっという間に船上を離れ、遥か彼方の海上に消えていきました。トップデッキには観測成功を告げる雄叫びの声、感動の絶叫が聞こえました。私はこれまで見られなかった3年間がやっと埋められたと言う思いで放心状態になっていました。色々な方が声を掛けて下さったのに、ロクな対応が出来なくて申し訳なく思っています。
船上の部分日食
観測を終えてトップデッキから帰還する際に見た海の青さは、日本本土では見られないような濃い青をしていました。普段日本の港で見られる抹茶色の海の色とは大違いです。改めて、ここは日本だけど日本ではない南洋に来たんだ…と実感しました。機材を部屋に運び入れ、遅めの昼食を取ります。この時は、身も心も放心状態で無言で食べていました。同席したカップルに言われるがままの質問に答えその場を立ち去ろうと思ったのですが、ほんの少しのきっかけで話に華が咲き名刺交換まで至りました。その日の日没は、いろんな感慨もあって特別なものとなりました。
硫黄島沖の日没
☆皆既日食観測履歴    皆既日食の地域名称    場所と地域       天候  撮影◎1988.  3.18   小笠原沖 皆既日食 (東アジア・父島南東沖)  晴れ  眼視○1991.  7.11   メキシコ 皆既日食 (北米・カリフォルニア半島)快晴  失敗×1992.  1. 4   アメリカ 金環日食 (北米・ロサンゼルス沖)   曇   不可○1994.11. 3   チ リ  皆既日食 (南米・チリ北部)     薄曇  失敗○1995.10.24   タ イ  皆既日食 (東南アジア・タイ東部)  快晴  成功○1997.  3. 9   シベリア 皆既日食 (北アジア・シルカ郊外)  快晴  成功○1998.  2.26   ベネズエラ皆既日食 (南米・ベネズエラ西部)  快晴  普通○1999.  8.11   ブルガリア皆既日食 (ヨーロッパ・黒海近郊)  快晴  失敗○2001.  6.21   ザンビア 皆既日食 (アフリカ・首都ルサカ)  快晴  成功◎2002.12. 4   オーストラリア皆既 (オセアニア・豪州南部)  快晴  普通△2005. 4. 8  パナマ金環皆既日食 (中米・パナマ西部の街)  薄曇  普通○2006.  3.29   リビア  皆既日食 (アフリカ・サハラ砂漠)  快晴  失敗〓2008.  8. 1   巴里坤  皆既日食 (中国・巴里坤県国境近く) 薄雲  失敗○2009.  7.22   硫黄島沖 皆既日食 (東アジア・硫黄島東方沖) 快晴  失敗○…第一接触~第四接触まで観測 ◎…第一接触~第三接触まで観測 ×…観測不可 〓…コロナの瞬間曇り△…食分70%前後は薄雲越しに観測可能 撮影の成功基準は雑誌に掲載されるようなレベルの写真
ふじ丸海上航跡図
ふじ丸7/22の航跡図

船の揺れを抑えるスタビライザーを使用しているため、システム上、どうしても船が前進します。ふじ丸は、皆既帯正午中心食に向かって進みました。皆既帯中心線の僅か北で皆既日食を迎えたのですが、ビデオカメラで実時間を検証したところ、実際は6分36秒ほどの継続時間でした。

皆既日食当日のふじ丸GPS
10:00 N 25°21.157' S 141°52.420'
10:30 N 25°19.730' S 141°56.145'
11:00 N 25°18.785' S 141°58.984'
11:20 N 25°18.190' S 142°01.080'

船上の歓喜

2009.7.22に北硫黄島東方沖60kmの海上で、ふじ丸の甲板から撮影した今世紀最大級の皆既日食です。約6分35秒間継続しました。物凄い歓声が聞こえています。
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