ミー散乱は、光の波長程度以上の大きさの球形の粒子による光の散乱現象である。粒子のサイズが非常に大きくなると、ミー散乱と幾何光学の二つの手法による計算結果が類似するようになる。波長に対して粒子(散乱体)が大きい場合は回折散乱が、光の波長の1/10以下になるとレイリー散乱が適用される。
グスタフ・ミーにより厳密解が導かれたとされているが、同時期にローレンツやデバイなども厳密解を得ていた。散乱の特徴として、粒子のサイズが大きくなるにつれて前方への指向性が強くなる。その際には、側方および後方へはあまり散乱しなくなる。
ミー散乱は、雲が白く見える一因である。これは雲を構成する雲粒の半径が数~数10μmの大きさで可視光線の波長に対してミー散乱の領域となり、可視域の太陽放射がどの波長域でも同程度に散乱される。
チンダル現象は、光の特性によって起こる物理化学的現象の一つ。分散系に光を通したときに、光が主にミー散乱によって散乱され、光の通路がその斜めや横からでも光って見える現象を言う。19世紀イギリスの物理学者ジョン・ティンダルによって発見された。
太陽が雲に隠れているときに雲の切れ間あるいは端から光が漏れ、光線の柱が放射状に地上へ降り注いで見える薄明光線はチンダル現象の一種と考えられている。
ミー散乱の強度は粒子径と波長がほぼ等しいときに最大となり、光の入射方向より特に前方側に多く散乱する特徴がある。ミー散乱の強度は波長に特に依存しないので、太陽光の場合は白っぽく見えることになる。