都内の皇居および銀座、霞が関周辺で目を疑うような光景が繰り広げられている。ボディに“強烈すぎる”メッセージをペイントした真っ白な超大型トレーラー10台が車列を組み、走り回っているのだ。
「身を捨てて天皇に直訴申し上げます 今日の余りにもひどい世の中の乱れは、全て天皇の不徳の所産です」とある。明らかに天皇批判である。ほかにも、「国民を代表して皇太子に直言します 宝の持ち腐れです。その至尊の立場は、貴方の私物ではありません」など、10台がそれぞれ違うメッセージを掲げながら皇居の真ん前で街宣している。
一般常識的には“暴挙”ともいえる活動だが、これを行なっているのは右翼でも左翼でも宗教団体でもなかった。調べてみると、「播磨屋本店」という、兵庫県に本社を構える、菓子を製造販売する会社だったのだ。さっそく播磨屋本店を直撃してみると、担当責任者が答えてくれた。
「活動の本意は、社長の著書『真実』やわが社のホームページをご覧ください。私たち社員は、あくまでお菓子屋ですので、基本は本業に力を注いでおります。ただ、社長に対しましては社員一同、感謝していますし、応援もしております」
この社長とは、「五代目播磨屋助次郎」と名乗る、本名・阿野拓夫という人物。彼の持論を要約するとこうだ。 「環境問題に象徴される現在の世界的な危機状況を救うのは126代天皇、つまり現皇太子である。救世主となるためには“人としての天皇”ではなく、“神としての天皇”に覚醒していただく必要がある」
現天皇に対し「不徳の所産である」という批判を皇居の前で行なうのは、世が世なら「不敬罪」で即刻処罰される行為であろう。そのあたりを弁護士に聞いてみた。
「天皇家や右翼にかかわるデリケートな問題なので、匿名でコメントさせてください。天皇批判を街頭で宣伝する行為は、言論の自由がありますから警察は都道府県で定められた『騒音規制条例』に違反した場合に取り締まることしかできません。ただ、天皇本人にも人権があります。総理大臣が代理で親告する形で『名誉棄損』で訴えることはできます」
天皇を信奉する右翼団体はどう考えているのだろう?
「われわれも問題視しているよ。組織としての意思決定が未定なのでいまは名前を伏せてくれ。著書やホームページ上で批判する範囲ならば静観できる。けど、皇居の前で直接陛下のお耳に届く形式での活動は絶対に許されない。近々阻止するための行動に出たいと思っているよ」
弁護士や右翼団体までもが匿名を条件にコメントする、非常にデリケートな問題であることがうかがえる。播磨屋助次郎氏はホームページ上でこう宣言している。
「各メッセージ内容は、当面この『勧告レベル』で様子を見ますが、天皇も皇太子も国民も全く目覚めないようなら、誠に不本意ながら、より激烈な『警告レベル』へ引き上げます」これは目が離せない厄介な事態になりそうだ。
記事は週プレNEWS から借用しました