YMOはシンセサイザーのサウンド、コンピュータ制御の電子楽器による自動演奏を大々的に音楽に取り入れた先駆者的グループである。それまでミュージシャンの手弾きによる生演奏が常識だったライヴにおいてコンピュータプログラムによる自動演奏を取り入れた点でも革新的だった。それまでのシンセサイザーは効果音製作や、既存の楽器の代用として使用されており、シンセサイザーや自動演奏でしか作れない曲を制作しようとした者はまだ少なかった。しかし、実際のレコーディングでは手弾きのパートと生のドラムの演奏が多かった。
YMO結成当時、コンピュータが刻むクリック音に合わせて演奏できるミュージシャンは数少ない時代だったが細野、坂本、高橋はクリックとの同期に違和感を持たない演奏家であったうえに、音楽・音色に対する探求心も強く、新たな技術を積極的に受け入れる傾向が強かった。そのためローランドから当時まだ試作段階であったにもかかわらず、ヴォコーダー「VP-330」を使ってほしいと依頼されたことがあった。
YMOのシンセサイザーと自動演奏は切っても切れない関係にあり、これらはプログラマーの松武秀樹の存在が大きい。レコーディングやライヴでの音楽データのシーケンサーへの打ち込み、自動演奏は松武が一手に引き受けていた。